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椿姫
第三幕その四
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、それは」
「そうともばかり言えませんよ」
 その口調がさらにシニカルなものとなった。
「元々そうした人であったならばね」
「それは侮辱ですかな?」
「ほう、誰に対する?」
 男爵は次第に怒りがこみあげてくるのを感じていた。そのうえでこう言ってきたのだ。
「宜しければお話して頂きたいのですが」
「わかりました」
 売り言葉に買い言葉であった。彼も言い返した。
「それでは」
「皆さん」
 だがここで全面的な衝突とはならなかった。フローラの執事の声がしてきたのである。
「お夜食の準備が整いましたが」
「おお」
 客達はそれを聞いて声をあげた。
「今日はヒラメをメインにしましたが」
「ヒラメですか」
「とびきり活きのいいのがふんだんに手に入りましたので。シェフが腕を振るいました」
「それは楽しみですな」
「ええ」
 フランス人の美食好きはこの時でもそうであった。かつてメディチ家から嫁いできたカトリーヌ=ド=メディチが広め、そして美食王とまで謳われたルイ十四世の時に確立されたと言ってもよい。もっともナポレオンはあまり味わうタイプではなく異様なまでの早食いであったらしいがそこは人それぞれであった。
「では行きましょう、そのヒラメに会いに」
「マダム、期待しておりますぞ」
「是非御期待あれ」
 こうして客達はフローラに案内され多くが奥の部屋に入って行った。宴の場には僅かな客達だけが残った。その中にはアルフレードと男爵もいた。

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