第三十四話
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ったけれど、彼女の顎に手をかけて、うまくやる自信なんて全然無い接吻を交わした。
そのまま両手を彼女の背に回すと痛くないくらいに加減して抱きしめた。
彼女の唇から俺のそれを外し新たな空気を求めようとすると、それを逃さまいと喰いつくように彼女は自分の唇を押しつけて……
「続きは、もっとお互いちゃんとした大人になってから……いいね」
「もうこのままあたしを大人にしてよ…」
いつもの元気にすらっと伸びた若木のような彼女が、ぐんにゃりとして頬どころか体中を上気させ潤んだ瞳で俺に縋ってきた。
俺は甘くて、そして…苦い思い出が頭をよぎった。
「…それは大人じゃ、無いよ。ただ、欲に負けただけの大きな子供」
「どうして…」
「……もし、我慢できずに愛し合って子供が出来たら、どうやって育てる? 俺が王子だって言っても、シルヴィと俺のことを父上が認めないどころか勘当でもされたらどうやって互いの食いぶちを賄い、子供も養っていくんだい?俺が傭兵でもやったとして、仕事で死んだらそのあとはどうなる?乳飲み子を抱えたお前がどんな苦労をするのか…考えるだけでも苦しいよ」
「……ミュアハは、オトナだね。あたし恥ずかしいよ……」
「そんなことない、それにお前の事が大事だからこんなふうに考えるって思ってほしい」
「うん…ありがと、だいすきだよ」
「シルヴィ、ありがと……」
「あたし、ミュアハの前に出ても恥ずかしくないオトナになる、なれるようがんばる」
もう一度口づけを交わして、一緒に泣いて、ちょっとだけお互いオトナに近付いたかな…
シアルフィではシルヴィアを下働きとして住み込みで雇ってくれるということになった。
勉強はスサール卿の孫、つまりオイフェと一緒に、というかたぶんオイフェが教えてくれるんだろうなぁということになった。
バイロン卿、シグルドさん、ありがとうございます。
月に1回、時には2回くらい、士官学校が全休の日に合わせてシグルドさんかバイロン卿はシルヴィアを連れてきてくれて、俺も彼女もそれぞれどんな生活をしているのか語ったり少しいちゃついたり一時の別れを惜しんだり…
そんな日々が半年も続くと俺は次の年次に進み、下宿先を探さないとならなくなった。
最初はアゼルが借りた部屋にレックスと俺とで3人で住んでみようとしたが狭いのもあったので、俺は身を引き、シアルフィ家を頼ってみた。
家賃の支払いを断られたので書生のように屋敷の雑務などを率先して行うことで少しは罪滅ぼしになればとやっていたら、家賃の受け取りをする代わりに自己研鑽に専念するように言われた。
……シアルフィ家に寄生しすぎですね、ごめんなさい!
こういう話も国元へ連絡は欠かせていないが……シルヴィアのことは
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