第十六章
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われている、同じ建物内に殺人鬼はいる、伊佐木も同じ建物内に来ている…終わりは遠そうだ。
「…どうしようか、これ」
何かなげやりな気分になってきて、流迦ちゃんのノーパソをあごでしゃくった。
「通報するか。俺たちよりも拳銃持ったおまわりさんの方が、戦力として頼もしいだろう。八幡、外で張ってる警官に声かけてくれ。俺が行くとややこしいことになるからな」
「は…はい…」
八幡を見送り、コンクリートの床に大の字になって紺野さんが呟いた。
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「…なんだろな、この状況」
「言わないでよ。それ言い始めると、疲れに呑まれて鬱になっちゃうよ」
柚木も、ぱたりと倒れてダクトが這い回る天井を見上げた。僕も倣って隣に寝そべる。ただ横になっただけなのに、柚木との距離がひどく近くなった気がして、少し緊張した。
「…入社した頃は、こんなじゃなかったんだ。俺も、あいつも。烏崎は同期でな、世間を知らないからみんな馬鹿で。俺もあいつも、そんな馬鹿の一人だった」
過去形。…死者を悼むような口調だった。
「馬鹿さ加減は皆似たようなもんだけど、あいつは悪目立ちするタイプの馬鹿だった。20代で課長になるとか、30代で専務に昇りつめて他社にヘッドハンティングされて、惜しまれつつ辞めるとか、酒が入って気が大きくなるたびに吹聴するんだ。…馬鹿だけど、嫌いじゃなかった。俺も馬鹿だったからな」
紺野さんは少しの間、無表情に天井を眺めていた。どう言っていいのか分からなくて、相槌を打てなかった。だって僕は、烏崎に恨みしか持っていない。
「…で、ありがちな話だ。当時ニコニコしながら聞き役に回っていた男が、あいつが思い描いたような出世コースに乗った。あいつはまぁ…外れた」
何も答えないでいると、紺野さんは言葉を続けた。
「その頃からだ、あいつが役職についた同期を避けるようになったのは。俺は特殊部隊だが、一応開発室のまとめ役になり、部下も出来た。…出世街道にはほど遠いし、興味もない。でもあいつにとっては、そんなことはどうでもよかったんだ。俺も、あいつの恨み帳に記載された」
「逆恨みじゃん、そんなの」
柚木が、何の感情もこもってない声で呟いた。僕も同じような感想しか持てない。ああなった以上、もう恨みは吹っ飛んでしまったけど。
「…で、あいつは、これまたよくある結論に達した。出世した奴は、裏で卑怯な手段を使って昇りつめる。俺は素直だったから、悪さが足りなかったから、出世街道から外れた、とな。そんなあいつの荒んだ気持ちに、伊佐木の思惑がキレイに寄り添った。伊佐木が垂らした蜘蛛の糸に、あいつはなりふり構わずしがみついた…てとこか」
「…ほんと、よくある話だね」
そんな言葉が漏れた。あまりにも、よく聞く話だったから。
「よくある話の、よくいる登場人物だ」
そ
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