第十六章
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イを睨みつけた。顔つきが、少し不自然なくらいに凶暴に見える。それにボイラー室に入ってからというもの、耳の奥の方にとても嫌な高音がへばりついて離れない。僕は、流迦ちゃんを振り返った。
「ねえ、何か変だよこれ。…消していい?」
流迦ちゃんは悪戯を見破られた子供のような顔で、ウィンドウを閉じた。そしてブラウザに何かのアドレスを手打ちして動画を再生する。青い空を背景にした動画から、クラシックのような音楽が流れ始めた。
「さすがにこれ以上はまずいかしら。…しばらく、これを聞いてなさい。沈静効果があるから」
「流迦…今度は何をした!!」
凶暴な空気をまとったまま、紺野さんが怒鳴った。
「やったのは私じゃない。そのライブカメラ、音声も拾うの」
「…音声?」
「人は年をとると、高音が聞こえなくなる。…聞こえにくいとかそんなレベルじゃなくて、可聴領域から外れるの。これは、ぎりぎり中学生くらいまでなら聞こえる音ね」
「僕も少し…不快な耳鳴り程度だけど」
「ふぅん、耳が若いのね。そう、今も大音響で鳴り響いているわ、あいつを狂わせた音楽が。…ねえ、紺野。カールマイヤーって、知ってる?」
「やっぱりお前か!!」
紺野さんが流迦ちゃんに詰めより、浴衣の襟をグイと掴んだ。流迦ちゃんは、怯えたように首をすくめた。
「待って!なんか…そういうことじゃない気がする」
二人の間に割って入って、紺野さんの手を解いた。紺野さんは意外とあっさり手を引いた。心のどこかで、流迦ちゃんの仕業じゃないことに気がついていたのかもしれないし、鎮静効果があるとかいう音が効いてきたのかもしれない。紺野さんの表情には、凶暴さの代わりに困惑の色が浮かんでいた。
「カールマイヤーを流したのが、流迦さんじゃなくて別の『何か』だとしたら、もっと嫌な事が起こってるかもしれない。」
「…話してみろ」
僕は紺野さんと会って間もなく、鈴やで待ち合わせた日の事を思い出していた。MOGMOGの着せ替えソフト貰ったあの日、確かに少し嫌な予感がした。あの時は何が嫌なのか分からなかったけど、今なら分かる。…もう、惨劇は起きてしまったけど。
「MOGMOGって、セキュリティソフト本体と、ビアンキやハルみたいな人工知能を別々に作って、後から組み合わせたものだよね」
「ああ、そうだ」
「セキュリティソフトって普通、フリーソフトのプラグインとか警戒するだろ。それ自体がウイルスとかスパイウェアを含んでるかもしれないから。だけどMOGMOGは、この前貰った着せ替えソフトみたいなプラグインも受け入れてしまう。セキュリティ自体は硬くても、人工知能側には隙が多いような気がするんだ」
「そういう見方もあることは認めるが…視覚的インターフェイスに関するプラグインは、精査した上で受け入れるけど、セキュリティに影響するようなプラ
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