第5話 花火大会
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
サイキックシティでもっとも違和感があるといわれている行事の一つと言えば、お盆であると言われている。
サイマスターグルーなどは、「先祖を敬うことはきちんとした意味がある」ことを事あるごとに広報しているが、超能力者達の中でも少数派の意見である。
もっとも、多くのサイキックシティの住民にとって、お盆が超能力とどのように関連性があろうともなかろうとも、日本の伝統となった行事を急にやめることはなかった。
牧石は、多くの企業が休みに入り、家族連れが行き交う光景が多く見られる、歩道をながめていた。
だが、氷をガジガジかじる音に反応した牧石は、ファミレスのテーブルの反対側に座る少女に視線を移していた。
少女は浴衣を身につけて、不満そうな顔を全開にしながら、グラスに残った氷をガジガジとかじっている。
「黒井。
まあ、落ち着けよ」
牧石は、言っても無駄とは思いながらも黒井に忠告する。
「牧石。
信じられる?
今日になって、急に花火大会に参加できないなんて最悪よ!」
「そうだね」
牧石は、適当にあいづちを打つ。
「お兄ちゃんは、毎日毎日補習で、いつになったら一緒に遊べるのよ!」
「いや、それを僕に聞かれても……」
牧石は、自分に言っても仕方がないことを黒井に指摘する。
牧石は、目黒の補習は当初2週間程度だと聞いていた。
それが、一ヶ月を過ぎた今でも毎日受けていると言うのはおかしいと、牧石は感じていた。
そして、黒井の発言の内容のとおり、急に補習が始まったと言われている。
あらかじめ、スケジュールが決まっているはずなのに、スケジュールとは異なるということが目黒の行動に疑問を抱かせる事になる。
牧石は一瞬「恋の補習授業?」という言葉が脳裏をかすめたが、あわてて忘却する。
牧石の考えが黒井に知られたら、黒井がどのような行動を起こすかわからない。
「たしかに、全く何の役にも立たない牧石に、文句を言っても仕方ないわね」
「……」
牧石は黒井の発言が正しいにもかかわらず、怒りがこみ上げる。
言い方というものがあるだろうにと。
「ならば、今日は帰ろうか」
牧石は席を立とうとする。
「牧石。
ちゃんと、お金を払いなさいよ」
「わかっているよ。
黒井に払わせるつもりはないさ。
レベル4に到達しているし」
牧石は今月分の交付金を受け取っているため、余裕はある。
もっとも、毎日飛行船に乗れるほど、潤沢でもないが。
「牧石、待ちなさい」
「どうした、黒井?」
「花火大会で、あたしを一人にさせる気か?」
「心が読めるなら、危ないことに巻き込まれる危険性も低いだろう?」
牧石は、黒井の能力のことを指摘する。
「牧石。
あたしの能力は万能ではない。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ