第5話 花火大会
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なっているのか、木々の先端部分が広がっている。
牧石は、花火の打ち上げられる場所と思われる、河川敷の方向に視線を向けながら、目黒が穴場というだけのことはあると感心した。
「牧石。
つかれた」
牧石は、後ろについてきた黒井の方を振り返る。
黒井は、言葉どおりの疲労の表情を見せる。
「はいはい、こっちこっち」
牧石は、丸太で組んだように見える柵の手前に、あらかじめ目黒の忠告に従って用意して置いたレジャーシートを広げる。
「……」
「……」
水色のレジャーシートに座った二人はお互い黙ったまま、時間がくるのを待っていた。
時間になると、暗闇の一部から、光があふれてくる。
花火大会の始まりだ。
大小さまざまな花火が、次々と色鮮やかに咲いては消えてゆく光景。
しばらくして届いてくる轟音。
「牧石、きれいだな」
「ああ、そうだな」
黒井は、素直に感想を言い、牧石はうなづく。
「牧石。
あれは、なんだ?」
黒井は打ち上げられた花火の一つを指し示す。
「ああ、登流乱れ七変化改といって、名だたる花火職人が絶対に無理と言った、立体的な映像を花火によって再現する技巧のことを指す。
名前の由来は、基本理論を考案した花火職人、「登流星(のぼり りゅうせい)」から取られている。残念ながら彼の生存中には完成しなかったけどね。
そもそも、打ち上げ花火の微細な変化は、職人にしか、なし得ないとされてきたが、スーパーコンピューター『エキドナ』によって解析されたことによって状況が激変した。
今では、サイキックシティでの開催される花火大会の9割が、『エキドナ』の後継機である『デルピュネー』によって……」
「牧石。
夏休みの課題のことは忘れなさい」
黒井は、口をとがらせて牧石に文句を言う。
「いや、花火について質問されたから答えただけで、……」
「静かに!」
黒井は、牧石に忠告する。
「どうした、黒井?」
「あそこにいるのは誰?」
黒井は、ここに到着するまでに歩いてきた方向へ指を指す。
「居ないじゃないか?」
「あっちに気づかれたから逃げたのよ」
黒井は不満そうに、牧石に訴える。
「だったら、テレパシーで思考を読めば良かったのに」
「牧石。
お前は最近耐性をつけたのか読みづらくなった。
テレパシーだと、送りたくない感情まで、送ってしまうことがある。
それだけは、避けたい」
牧石の提案に、黒井は言葉を選ぶような感じで返事をした。
「別に、送ってもらっても構わないぞ。
どうせ、僕のことをバカにするような内容だろう?」
牧石は、気にしない様子で言った。
「……そんなんじゃない」
「何か言ったか?」
「うるさい!」
黒井は不機嫌な様子で、牧石を睨みつけ
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