第3話 サイサロン
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石は「エスパーありま」にお願いした。
「スプーン?
ああ、いいよ」
「エスパーありま」は、牧石のお願いに疑問を浮かべながらも、快くスプーンを手渡した。
牧石は、スプーンを手にすると、精神を整えた。
「……」
牧石は先ほどとは異なるイメージをゆっくりとそして力強く送る。
ほどなく、スプーンに変化が訪れた。
「元に、戻った!」
「エスパーありま」は、元にもどったスプーンを見て、驚いている。
「ええ、曲げっぱなしだと、次の人にお願いするときに困ると思いまして。
戻す方は、それほど得意ではありませんから多少精度は落ちますけどね」
「おもしろいね、牧石さんは!」
「エスパーありま」は、笑いながら答える。
「たしかに、直すためには曲げるよりもイメージが難しいからね。
すばらしいよ、でもね……」
「?」
牧石は首をかしげる。
「特殊な形状記憶合金で作られているから、熱湯に漬けると元に戻るのだよ」
「……」
「牧石。
知らなかったのか?」
黒井は牧石の顔をのぞき込む。
「……、ああ」
牧石は、黒井に正直に答えた。
「ぷっ」
「笑うな!」
「ま、牧石、おもしろいな」
「だから、笑うな!」
「……」
牧石と目黒が騒いでいると、テーブルに一人の男が黙ったまま近づいた。
牧石は、先ほどの愛想のない店員と思って視線を向けると、暗い店内にもかかわらず、サングラスをかけ、冷房の効きが悪い蒸し暑い店内にもかかわらず、黒のスーツを身にまとった中年の男性がいた。
「今、一人で静かに飲んでいるんだ……。
わるいけど、邪魔しないでくれるかな」
「はい……」
「ごめんなさい」
牧石と黒井は男性に謝った。
男性はなにも言わずにカウンターに戻っていった。
店内も静かになり、店員がいくら待ってもこないのに気づいた二人は、「エスパーありま」から、テレパシーで注文しないとメニューは来ないと指摘され、それぞれ店員に向けてテレパシーで注文した。
牧石と黒井は、メニューが到着するのを待つ間、「エスパーありま」から話を聞いていた。
「身の回りにある、何か一つのものをじっと見続けていると、いつもとは違った世界を感じることができるようになるよ」
牧石にとって、身の回りのものは、それほど慣れ親しんだものではない。
だから、牧石はそれほど深く考えることはなかった。
それよりも、牧石は目の前に広げられている料理の数々に目を奪われていた。
「なにこれ?」
「アラビアータ、カルボナーラ、ペペロンチーノ、カルボナーラ、ヴォンゴレ、ネーロ、ジェノヴェーゼ、ボロネーゼ」
牧石の質問に対して、店員は、やるきのない様子でテーブルにおいた順番に事務的に読み上げる。
「僕、頼んでないですけど……」
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