第7話 終業式
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教室のドアが勢いよく開かれ、我らが保健委員会委員長である火野が姿を現す。
「黒岩君、慌てる必要はない。
我が病院は、多少予約時間が遅くなっても文句は言わない」
「……」
「ならば、どうして慌てているのだ」
「……」
黒岩は俯いていた。
「……。
そうか、邪魔したようだな」
「……」
「ムキになって、否定しなくてもいい。
さすがに、校内で過度の親睦を図るのは衛生上良くないので、保健委員長として忠告しておくが」
「それはない」
『それはない』
牧石は声に出して、黒岩はテレパシーで否定した。
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牧石が終業式を迎えていたころ、磯嶋はサイパークにある、祈念碑の前に立っていた。
祈念碑には、サイキックシティ成立を阻止するために行われた爆破テロ事件の概要と、それを阻止するために犠牲となった人の名前が刻まれている。
市民公園という、人気の多いスポットであるにもかかわらず、祈念碑の周辺には磯嶋のほかには誰もいない。
祈念碑の周辺はきれいに磨かれた正方形の黒い石畳で覆われており、熱を集めてしまっているからだろうと、磯嶋は考えていた。
祈念碑を見ながら、「予知は万能ではないこと」を思い知らされていた。
テロ事件が発生すること自体は、元々予知されていた。
それでも、すべての事件を防ぐことができるわけではない。
原因は、二つあった。
一つ目は、複数同時に事件が発生したことである。
同時多発的なテロは、大部分の作戦を防いだとしても、一つでも成功すれば、テロを許すことになる。
防ぐ側も、人員を増強して対応したが、絶対数が足りないこともわかっていた。
そのため、重要な施設を中心に対応することになり、ここでのテロ事件をくい止めることができなかった。
二つ目は、テロリスト側にも、予知能力者が存在したことだった。
予知能力者は、「予知を知る前の行動」を予知することで、別の可能性を探ることができる。
ということは、複数の超能力者がそれぞれ予知を行った場合、後に予知を行ったものは、「先に予知を知った者による行動により改変された後の行動」を知ることになる。
そうなれば、少し前に予知を行い行動する方が、単純にいえば有利になる。
もちろん、挽回するために必要な行動をとる時間があればの話だが。
このテロ事件により、未だに癒えない傷を残した者がいる。
祈念碑を前にしている磯嶋もその一人である。
磯嶋は、12歳の時にテロ事件により両親を失い、6歳年下の弟は行方不明となった。
磯嶋は、遠縁に預けられ、大学を卒業し、研究員として勤めるようになると、1人で暮らしていた。
磯
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