第7話 終業式
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それでも、牧石は、ゆっくりと黒岩に近づこうとした。
牧石は、わざと黒岩に接触して黒岩の考えを知ろうと思っていた。
今日を逃せば、次に黒岩に会うことになるのは、9月まで待たなければならないことは確実だ。
そうなると、黒岩が抱えている問題を解決することができないかもしれない。
牧石は、自分ができることが限られていることを知っているが、それでも黒岩の力になればと思っていた。
牧石が、決意を固め、背後から黒岩に接触しようとした直前、
『私に触るな!』
と、いう強い警告が牧石の脳内に届く。
「誰?」
牧石は思わず周囲を見渡す。
『黒岩だ。
再度警告する。
私に触るな!』
牧石は、近くにいる黒岩からあわてて後ずさる。
『牧石。
私のことを気にしているようだが、心配は無用だ。
それ以上に、そもそも余計なお世話だ!』
「どうして、僕の考えがわかるのだ?」
牧石が黒岩に質問する。
『私も、牧石と同じようにサイコメトリー能力を持っている』
「まさか、レベル6なのか……」
牧石は思わずさらに1歩後ずさる。
牧石は相手に触れなければ相手の考えをのぞけない。
目の前にいる黒岩は、牧石に触れることなく牧石の考えを見抜いている。
『牧石。
君は、携帯電話を忘れているだろう?
そして、携帯に対サイコメトリーアクセサリーをつけていることも忘れているようだな』
「なるほど」
牧石は、自分の失敗に気づいた。
『牧石が、先日の事件解決に大きく関与したことも知っている。
だからといって、私にまで関与する必要はない』
黒岩は、牧石に冷酷な声で宣言する。
『私は、2月から顔面麻痺の状態で、ほとんど顔の下半分を動かすことができない。
現在、専門の医療機関で治療を受けている。
2学期になれば直るだろう』
黒岩は、自分の状況を簡単に説明する。
「……」
牧石は黙って聞いていた。
『今はまだ、声を出すことができない。
それだけだ』
「……」
牧石は、黒岩が置かれた状況を理解して少しは安心した。
『牧石は、自分の考えを人に覗かれてもかまわないと思っているのかい?
今の状況をうれしく思っているのかね?』
「……」
牧石は、黙ったまま首を振る。
黒岩は、牧石が首を振ったことはわからないが、牧石の気持ちを知っているのだろう。
『……。
まあ、反省したのなら、今後も私にかまわないで欲しい』
「……」
牧石は、うつむいている。
牧石は、黒岩と仲良くなりたいとまでは思わなかったが、完全に嫌われたことに落ち込んでいた。
『牧石。
別に私は、君を嫌っている訳ではない、ただ……』
黒岩が続きを話そうとして、言葉を止める。
「待たせたな、黒岩君!」
「!」
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