第7話 破綻
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関心があって話しかけないものとばかり考えていた。
だが、そうではなかったのだな。
あらかじめ、クラスメイトに僕が転入した場合に僕に話しかけないようにたのんでいたのだね。
僕が、記憶喪失であることや、孤児院で育ったことを説明することで生じる、空気を嫌ったのだな」
「よくわかったな」
目黒は苦笑した。
「まあな。
翌日にクラスメイトから普通に声をかけられたから、無視された訳ではないことぐらい気づく」
「よけいなお世話だったかな?」
目黒は少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「そうであれば、お礼は言わないさ」
「……。そうか、それは良かった」
目黒は安堵の表情を見せた。
「〜♪」
牧石の携帯にメールの着信音が届く。
「?」
牧石は通常メールとの着信音とは異なることに驚いたが、メールのタイトルを見て納得する。
「レベルアップのお知らせ」と書かれたタイトルと、有名な国内RPGのレベルアップ音の着信音。
これは、牧石が携帯電話のアプリケーションとしてインストールした、サイレベル上昇時連絡サービスであった。
「おめでとう、牧石。
こんな短期間でサイレベルがあがるなんてすごいな」
目黒は、いつも以上に喜びの表情を見せる。
おそらく、会話の流れが変わったこともうれしかったのだろう。
「……ああ、ありがとう」
だが、牧石は素直に喜べなかった。
「どうした、牧石?」
「いや、最近勉強の毎日で、超能力の鍛錬を以前より減らしているのだよ。
最低限の精神統一は行っているが、短期間でレベルアップする事はありえない」
「そうだね……」
「……」
二人は、黙って外の景色を眺めていた。
「なあ、目黒」
「どうした、牧石」
目黒は牧石の話しかけに対して、少し疲れた様子を見せる。
「海外の旅行者は、誰もがあんなに薄着なのかい?」
牧石は、周囲に聞かれないように、声を落として質問する。
「薄着?」
「あの人なんか、水着と言うか下着だろう?」
牧石は、目黒の疑問に答えるために、長くきれいな金髪をした女性に視線を移す。
牧石の目から女性を眺めると、表面積の小さい黒い下着を身につけているようにしか見えない。
「何を言っているのだ、牧石?
お前が指摘している女性なら、紺色のスーツを着ているぞ。
お前は何を言っている?」
「どういうことだ?」
牧石は、目黒の言葉の意味を考えていた。
そして、最近自分の周りで起きた出来事を思い出す。
磯嶋とのやりとり……
時々襲ってくる疲労感……
急に、物にぶつかる……
目の前にあるのに「ない、ない」と言って探す……
「……そういうことか」
牧石はようやく、自分がレベルアップした理由を理解した。
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