第5話 勉強会
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めるわね」
樫倉は、牧石の誠実な対応に、少しだけ表情を緩めると、さっそく教科書を開いて説明を始めた。
「今日は、バネを使用した場合の物理法則を説明するわね」
「お願いします」
牧石は、真剣な表情で樫倉の説明を聞いていた。
牧石は、樫倉からのお願いに対する報酬として「勉強を教えて欲しい」とお願いした。
樫倉は、牧石の提案に了解の返事をすると当面の間勉強を教えてもらうことになった。
当然、樫倉が委員長の仕事が入っていたり、牧石に研究所での実験や、保健委員の仕事が入っていたりする場合は休みとなる。
牧石は委員会活動として、保健委員になった。
牧石の学校における保健委員の活動は、運動会等のイベントでの対応や、献血等における早朝の啓発活動ぐらいで、夏休みなどは参加する必要がなかった。
それならば、行動に制限を受けないと考えて牧石は保健委員を引き受けた。
ちなみに、このクラスにいる牧石以外の保健委員は、無口な女生徒だった。
牧石が、勉強を教えてもらうようにお願いした理由は、「夏期補習に参加したくないから」である。
牧石はがんばって勉強したおかげで、中間試験に相当する編入試験はそれなりの成績を取っている。
しかし、学校の授業内容と試験内容は少しズレているため、この時期に編入した生徒にとって、期末試験は難易度が高くなる。
そして、学校側は編入生たちが、今後の授業で苦労しないように、編入生には期末試験における補習対象の難易度を上げることにした。
具体的には「中間と期末試験の合計点が60点未満」という基準であり、どの生徒にも当てはめているのだが、中間試験を受けることができない編入生にとっては、「期末試験のみで60点以上を取る」必要に迫られるため、難易度が跳ね上がることになる。
ただし、この措置は補習の対象者の話であり、1学期の成績は中間試験の点数を期末試験と同等の点数と見なして評価をつける。
牧石は、中間テストの成績が張り出された紙を見て、樫倉の成績を確認した上で牧石に勉強を教えてくれるようにお願いした。
牧石は、自分の考えが正しかったことを、実感していた。
樫倉の教え方は、簡潔でありながらポイントを抑えてあり、「努力している秀才」という表現に当てはまるような指導法であった。
そして、牧石がわからないところを、納得するまで説明してくれるところは、非常に丁寧であった。
「樫倉さん、ありがとう。
教師に向いているとおもうよ」
今日の勉強会が終わったところで、牧石は樫倉にお礼を言った。
いつもなら、少し調子の外れた吹奏楽の練習音で時々集中が乱れることもあったが、今日はイベントにかり出されており、静かなものだった。
もう少し暑くなれば、吹奏楽の演奏もうまくなるだろうが、今度は蝉の
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