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とある誤解の超能力者(マインドシーカー)
第9話 特訓の日々
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に入った。
この研究所にとって、所長室とは、来客を向かい入れるための部屋ではない。
来客者が簡単に来られないからだ。

ここの所長室は、事務を行うための部屋ではない。
事務仕事は、研究所の管理運営も含めて副所長や事務局長、そして理事たちに任せているのだ。
ここの所長室は、研究室であることが求められていた。

所長室の中央には、円形のテーブルが用意されていた。その中央に所長が座り、テーブルの上に置かれたディスプレーを眺めている。
研究室といっても、器具を使用する実験は必要ないため、研究室としては整然としていた。

所長は、天野が音を立てずに所長室に進入した時点で、天野に声をかける。
「天野君。わざわざ、直接私に会いに来るとは珍しいこともあるものだ。
今日は、エキドナのことか?
それとも、磯嶋のことか?」
所長の視線は、ディスプレーから離れることはなかった。
「どうせ、君の研究の成果がでるのは、まだ先だ。
エキドナにこだわることはあるまい」
「だからといって、少しも能力が出現しない少年に、貴重な機械を使用させるなんて、貴重な機械の浪費にすぎません」
「……。
君には、あの少年が能力を発揮していないと思っているのか。
なるほどな……」
「どういうことですか?」
天野は、所長を眺めていた。

所長は、目の前にあるディスプレーをしばらく眺めると、テーブルにあるキーボードにしばらく打ち込む作業を行った。

第5世代コンピューター「エキドナ」は所長室につながっている。
エキドナを通常使用するのであれば、端末やディスプレーすら不要なのだが、所長は昔のディスプレー、キーボードを使用していた。


「どうして、キーボードやディスプレーを未だに使用していますか?」
かつて、勇敢な研究員が所長に質問したことがある。
「私の研究はこちらの方が進むのでね」
それが、所長の回答だった。


「所長!」
天野は、返事をしない所長に腹をたて、詰問した。
所長室に無断進入した上に、所長の命令に反対し、あろうことか詰問までする研究員に対して、所長は少しだけ悲しそうな表情をする。
「……。
そうか、あれの価値がわからないとはな」
「?」

困惑する天野を無視して、所長は話を続ける。
「まあいい、十分な情報が得られた。
君の言うとおり、次の卒業試験で合格しなければ、実験は中止ということにしよう」
「ありがとうございます」
天野は、満足そうにうなずいて、所長室を後にした。

「確かに、時は満ちたな」
所長は、一人残った室内で別の研究のことを考えていた。



天野が、所長室を出た翌日に、所長から新しいメールが研究所職員に送られた。
そのメール内容は、
「翌日に、牧石の卒業試験を実施する」と
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