第9話 特訓の日々
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できなかった。
特訓の成果が現れる兆しは、いっこうに見えなかった。
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広大な敷地を持つ、超能力開発センター。
その中には、三角柱の構造をした窓や扉のない建物があった。
その部屋の持ち主は、たった一人で生活をしていた。
その持ち主は、開発センターの所長だった。
所長は、超能力に関する多くの研究を世間に公表することで、科学的な見地から超能力の存在を明らかにした。
その後、超能力をもとにしたエネルギーの開発により、エネルギー革命を起こしたこと。
さらに、超能力を「新しい力」として物理法則に組み込むことで、「大統一場理論」が2013年に完成した。
この時、科学と超能力が一体となった。
これにより、人類の新しい進化が始まったといえるだろう。
このように、人類史上もっとも偉大な研究を成し遂げた所長ではあったが、ある日を境にして研究所の建物内に籠もる生活を続けていた。
研究所の所長にもなれば、基本的に研究だけに打ち込むことなどできない。
特に、研究所の規模が大きなこの組織は、運営のためのマネジメントが求められるのだ。
所長は、それらの業務をすべて3人の副所長と1人の事務局長、そして12人の理事に任せ、自分の研究の世界にのめり込んでいた。
研究所に引きこもっていると言っても、外部からの情報は、第5世代コンピューター「エキドナ」によって容易に入手できる。
だから、所長室に侵入した白衣を身につけたやせぎすの男、天野のことも知っていた。
所長の部屋に侵入した天野は、磯嶋と牧石の能力開発のせいでエキドナが使用できなくなった男であった。
この天野以外にも、エキドナが使用できなくなった研究員は数多くいたが、ほとんどの研究員は「またいつもの所長命令か」と、ため息をすると、他の端末を使用するか、長期休暇を取得して余暇を過ごしていた。
所長が奇妙な命令を出すのは、今に始まったことではない。
普通であれば、天野も同じことを考えただろう。
しかし、天野は最近入所した磯嶋という研究員に強く敵対意識を持っていた。
天野と磯嶋は、似たような分野を専門にしていた。
そして、所長は入所したばかりの磯嶋に対して、名指しで命令したのだ。
それは今の所長が就任して以降、初めてのことだった。
他の研究員たちも、その事実に驚いてはいたが、「所長の命令だから」とさほど重要視していない。
せいぜい、「少年の子守を頼まれただけ」以上の考えを持っているだけだ。
だが、天野は違った。
所長が、磯嶋を重用して、自分を研究所から追い出すのではないかと考えたのだ。
天野は、真意を質すため、黙って所長室
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