レベル0 へやから でられない むのうりょくしゃ
第1話 部屋から出られない無能力者
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密検査で能力開発訓練を受けていないのであれば、研究員がその事実に気づかないはずはない。
このことから、超能力を開発するために、投薬など必要ないことを推測した。
それは、牧石が思い浮かべた世界と異なることになる。
牧石は、自分がアニメで知っている「この世界」の知識との差異に違和感を覚えたが、確認する相手もいないため、ひとまずセンターから外出できるようにすることが、優先事項だと考え、違和感を無視した。
研究所を抜け出して外の世界に出るためには、ここでの訓練を終わらせてセンターのお墨付きを得なければならないのだ。
そして、最終的な目標である「元の世界に戻る」為には、超能力のレベルを最高レベルまで到達させて、「神と同じ水準」にまで、たどりつかなければならない。
俺を絶望に追い込んだ、瑞穂を一度殴るために……。
「いかん、いかん。
集中、集中……」
牧石は、そのような雑念を振り払い、精神を目の前の扉に集中させる。
「……」
精神を集中させた先には、漆黒の空間が広がっていく。
広がる闇の中にいる、牧石の閉じた瞳から思い浮かべるのは、小さな黒い球状の物体である。
漆黒に覆われた球は、目の前にある扉に仕掛けられた鍵をはずすための象徴である。
その物体が赤く光るように意識する。
その球が一定の数を満たすことで、目の前にある扉の鍵をはずすことができるのだ。
この鍵をはずすためには、目の前に思い浮かべた10個の球のうち6個光らせることができればよい。
これが、この世界で使用されている「サイロック」と呼ばれる施錠システムだった。
牧石が見た、アニメの世界では「サイロック」と呼ばれるシステムについての描写はなかった。
ひょっとしたら、牧石が読み損ねた原作には記載されているのかも知れない。
だが、残念なことに今の牧石には確認する術がなかった。
「……」
牧石のイメージで産み出さされた球体は、浮かんでは消えていった。
その中で光った球体は、一つも無かった。
牧石は、意識の中で生み出した球体を一端意識の外に追い出して、次の光の玉を生み出す。
しかし、牧石がどんなに念じても、光がともることは無かった。
講義の中で、基礎的なトレーニングをきちんと受けていれば、約5割の確率で点灯することを知っている。
逆に、全くつかないということは、逆の意味で確率が低い出来事だ。
だからといって、扉が開くわけではない。
牧石はそれでも、あきらめることなく意識を集中して、開錠を試みる。
「この程度、満足にできなければ、施設から出られない。
ならば、この部屋から出られないのも同じ事……」
牧石は、心の中で挑戦した回数を50まで数えていたが、いつの間にか数えることを放棄し、自分がここに至るまで
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