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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十四話 千客万来・桜契社(上)
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内容に反してなんの感慨もこもっていない声であった。

「あぁ、それと――」
 ちらり、と自身の陪臣に視線を送り。
「それと戦地で文を交わした将校にも、だ。」
「――――う。」
 野戦昇進した少佐の身でありながら水軍中佐に伝書竜をやらせた男はだらり、と額に汗を浮かべた。
 その様子を、笑みを浮かべた駒州公が眺めている。
「笹嶋君もよろしく願いたいのだが。」
「はい。」
会話の合間に給仕達が弱めの米酒と軽いつまみを円卓に並べる。
これで実仁親王殿下が到着するまで間をもたせるのだろう



 小半刻もすると場もほぐれてきた。尤もそれを分かりやすく示したのは新城少佐だった。
細巻を楽しみながらつまみと杯を口に運んでいる。
 一方の馬堂中佐は最初に杯を交わした後は二杯目を半分まで空けてからは頭をふらふらさせている。気がついた新城少佐が苦笑を浮かべてつまみと水を追加で持ってこさせてからはもそもそとつまみを水で流し込みながら黙って耳を傾けていた。駒城親子と笹嶋は杯を傾けながら世間話をしている。

「――是非とも笹嶋君には御家族ともども我が屋敷の庭宴においでいただきたいですな。」
「えぇ、喜んで伺います」
 先程の言葉の通り、笹嶋にとって駒城との縁を築く事はけして損ではない。ましてや守原が他の将家の囲い込みを始め、その戦略方針に納得出来ない以上はその利益は水軍の衆民将校達の大半へと還元されるだろう。

「あぁ新城少佐、君の猫をその時に子供達にもみせてやってくれないかな?
私の話を聞いてからは随分とお気に入りでね」

「えぇ、分かりました。千早も幼子の扱いには慣れていますし、問題無いでしょう。
千早にも磨きをかけておきますので、中佐殿も楽しみにしていてください」 
 新城少佐が嬉しそうに言った。
「――幼子? 千早が内地で婿でも見つけたのですか?」
 口数を減らしてもっぱら飛び交っている話に耳を傾ける事に専念していた豊久が首を傾げて新城へと尋ねる。
「幾ら何でも3ヶ月でそれは早すぎだ。」
「ならば人間の子供ですか?だとしたら随分と豪胆なことですね。哀れな未来の剣虎兵将校候補生ですか?」
 水をすすりながら豊久は茫洋とした口調で問題発言をする――が
「なに、初姫様にそんなことをさせるわけにもいかんさ」
「初姫――さま?」
「「ブッ」」
それをあっさり上回る問題発言が飛び出した。
「ゲホッ――おい、待て、それって――」
 噎せこみながら馬堂中佐が話し出した。
「――失礼、御育預殿の監督の下なら問題無いでしょうが。」
驚きのあまり酔いが醒めたのだろうか、口調が戻っている。

「姫様が随分と気に入って下さったようでな。」
口元をほころばせて軽く手を振る。

「直衛がついているのならば間違
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