ラウラ・ボーデヴィッヒ
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らないが、ラウラの表情は苦痛に歪み――まるで、大切なモノを失った様な子供の顔だった。
周りを取り囲む無人IS郡は、思考能力を持たないコンピュータの頭脳で何を思ってか切嗣とラウラに手を出さないでいた。これ幸いと、切嗣はラウラに語りかける。
「頼む。思い出してくれ。ラウラが、ラウラ・ボーデヴィッヒが抱いた本当の望みを……」
「私の……望み?」
彼には解っていた。彼女の望みは破壊によっては叶えられないと。
――私は、何故狂気に取りつかれた?――
――何故、あんなにも苦しかった?――
「不味いな……敵が動き始めた」
見やると、切嗣達を取り囲んでいたゴーレム達が痺れを切らしたと言わんばかりに接近し始めていた。
無言でラウラを抱き抱え、立ち上がる。
「お、おい!一体どうするつもりだ!?ISはもう使えないんだ……」
そう、敗北したラウラは言うに及ばず、切嗣のISもダメージを受けた時に強制解除されている。ただの人間がISから逃れられる訳がない。
ただの人間ならば……
“Time alter --”
魔術使い「衛宮切嗣」の口から禁断の呪文が紡がれる。
其れを言わせないと、ISが襲いかかってくる。迫り来るミサイル。乱射される銃の嵐。
しかし、切嗣の呪文は一瞬で完成した。
“triple accel! ”
瞬間、切嗣はこの世の理を破った。生身で総ての銃弾を避け、向かい来るミサイルを撃ち落とした。
「な!?」
ラウラの口から驚愕の悲鳴が漏れる。ISに対抗するにはISしかないという不文律のような真理に、衛宮切嗣は抗って見せたのだ。
「しっかり掴まっているんだ」
そして返事を待たずに、ラウラが自分にしがみついている事を確認するや否や、敵に突撃した。
そこからラウラが見た光景は、圧巻の一言に尽きた。風の様な速さで銃弾を回避し、高速でリロードされる銃弾が小型ミサイルを貫く。一重に修正力が弱いこの世界だからこそ出来る芸当だ。固有時制御――三倍速。奇跡の補助を得ずには為し得ない魔法の片鱗。風を切り裂き正面から向かい来る銃弾を、体勢を低してかわす。その間にコンテンダーをリロードし、背後からのミサイルを撃ち落とす。そんな科学と魔術の戦いという非現実の中、ラウラは平凡な、ありふれた事を考えていた。
――何故、こんなにも暖かい――
side ラウラ
私は、軍のために産まれた。所謂、試験管ベイビーという奴だ。
軍のために生き、軍のために死ぬ。其れを当たり前の事と考えていた。物心ついた頃から訓練に明け暮れ、私が自分を認識した時には戦力外通知を受けた。その時初めて認識させられた。伽藍堂の自分を。私には何も無かったのだ。ただ「在る」それが唯一にして絶対の存在理由だったからだ。そうだと解った瞬間、随分
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