第三十三話
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「それは良かった。もうしばらくこういう暮らしをさせちゃうけど我慢できそう?」
「んーーー。毎日こうやって来てくれるなら我慢できちゃうかも!」
「毎日はなぁ…顔だけ見せてそれで終わりの日が週に2,3日はあるけどそれじゃだめ?」
「う〜〜〜ん、いいよー我慢するっ! ところで何してるの?」
俺が話ながら手紙を書いていると彼女がそう問いかけてきたので
「んー?手紙書いてるんだ〜、そうだ、お前、字は読み書きできる?」
唇に指を当ててふるふると首を左右に振る仕草が愛らしい。
「じゃ、これ書きあげたら少し手ほどきしてあげるよ」
「えー、めんどいし、難しい事はミュアハがやってよ〜」
「ダーメっ! それにそれはヴィアの為でもあるんだよ?、例えばここの宿、俺が見つけたけど字が読め無かったら何の店かとか看板に書いててもわからないし、食べ物屋でメニュー見てもなんにも頼めないぞ?他にも…」
「わかったわよー。そうだよね、ミュアハの言う事なら聞いてあげる!」
「ありがとね。いい子だよ」
頭を撫でて髪をくしゃくしゃ〜ってしてやると彼女はすこしむすっとして
「コドモ扱いはやめてよー!」
「…それは失礼しました、お嬢様」
席から立ち上がって少しおどけた態度でお辞儀をすると彼女は笑いだした。
そのあと文字をいろいろと教えてやり、書き写したものを受け取ってもらった。
計算のし方も教えてやったが、俺も数字はあまり強くないので最低限と言ったところか。
楽しい時間はあっというまに過ぎ去り、俺が帰ると言うと引きとめる彼女に後ろ髪引かれる思いをしたが、まずは今日教えたぶんの読んだり書いたりをできるようにと宿題を出してシルヴィアの元を離れた。
そうして俺はバイロン卿の屋敷までやってきた。
というのも先程したためた手紙を渡したかったからだ。
俺が守衛に名乗ると向こうは俺の事を知っていてくれたようで便宜を計ってくれ、屋敷の管理人経由でバイロン卿の文箱に入れてくれるということになった。
…本来ならレンスターの領事館に頼むべきかも知れなかったのだが、内容が内容だけに悩んだ末バイロン卿とシグルドさんを頼ることにしようと思った。
その内容とはシルヴィアの今後の身の振り方に関することで、厳格なレンスターよりはおおらかなシアルフィのほうが彼女への負担も少ないし、なによりここから近い。
シグルドの人柄なら困った人を見過ごせないだろうという自分の計算にも、彼の元に所属するのが数年早まるだけだと自己正当化するのにも自己嫌悪してしまったが…。
翌日シルヴィアの元を訪ねて、明日から3日ほど顔出しだけになることを告げると表情を曇らせたけれど、友達を(アゼルとレックスだが)連れてきてもいいかと聞くと喜んでくれた。
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