第三十三話
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シルヴィアの所属していた旅芸人一座に金を渡す前、一掴みぶんくらい金貨を抜き取っておいたのでそれを彼女に渡し、治安の良さそうな通りの宿に連れていった。
そうして、しばらくここに逗留するよう伝えた。
「俺は門限あるんですまないな!、明日講義が終わったら会いに来るから待っててくれよ。
出かけるなら宿の人に言伝頼む」
俺はシルヴィアの頭を撫でるとそう告げてまたもや走り出した。
今度も死ぬほど走った。
さっきの往復と違って身は軽いものだからなんとかギリギリ門限に間に合い、滑り込むようにして敷地の中に入り込めた。
守衛に苦笑されながらも挨拶と敬礼を返し、ようやく俺は安堵した。
入浴可能な時間はとっくに過ぎていたので、洗面所で濡らしたタオルを絞り、体を拭いて人心地ついた。
アゼルには帰りが遅かったのとさっきの大慌ての様子を詮索されたので、今日の出来事をかいつまんで話したら、驚かせまくったものの詳しい話はまた今度と切り上げた。
今日は疲れ切ったので消灯時間の前だというのに俺は寝台に潜り込み、あっという間に眠りについた。
翌朝それでもいつも通り起きだして朝練を行うことにした。
さすがに今朝は休もうかとも思ったが、あれから1日置きくらいで朝練に顔を出すようになったレックスをがっかりさせたくはなかったからだ。
ストレッチや柔軟を済ませてから素振りを始め、しばらく時間が経過しても来ないものだから飽きちまったかな?なんて思っていたら息を切らせてやってきた。
「お前に言われた通りやるのは気に食わないが、強い奴がそうやって強くなったって言ってたからな」
「走り込みお疲れ様です。では息を整えたらかかってきてください」
「お、おう…」
がんばれよ!と思う自分がそこにいた。
一生懸命な奴はキライじゃないさね、レイミアにそう言われたこともあったかな。
放課後まっさきにシルヴィアを預けた宿を訪れた。
フロントで彼女を呼びだすようお願いすると、彼女の気配が後ろからしたので敢えてやりたいようにさせてやった。
「だーれだっ!」
後ろからすらっとしたその両手で俺の目を塞ぎながらくすくす笑うので
「う〜〜ん、これは難しいなぁ。でもその声は……シルヴィだな?」
「あったりぃー!」
俺たちのこんなアホなやりとりを見ていて微笑んでるフロントの方に会釈すると、この宿のロビー的な共有スペースにある腰かけへと移動した。
シルヴィアを座らせると俺もその隣に腰かけ、鞄から筆記具を取り出しながら話しかけた。
「おとなしくここで待っててくれてよかったよ。でも、退屈だったろ?ごめんな」
「そーよ、もう暇で暇で!あっ、でもねー、お部屋のベッドがすっごい綺麗だし布団はふかふかだし、天国ってやつみたいだよ!」
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