番外1話『ローグタウン』
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してほしいとは思っていない。ハントのセンスが悪かろうが、それがナミのセンスとかけ離れていようがナミからしてハントの意見が聞きたかった。
むしろ、そういう会話をしたかったのだ。
「まぁ、そう……なんだろうけどさ」
どうも言いづらそうに言葉をにごらせようとする。
もちろん、ナミのことを好きなハントが試着室から出てくるナミの服装に興味がなかったわけは、断じてない。それどころか彼なりに必死に言葉を考えていた。
なんといえばいいのかを。
ハントが彼女に思った第一の感想は、どの服においても同じ。
――似合ってるけど、着てほしくない。
これだった。
「じゃあ、どう思ってたか教えてよ」
ジトっとした目でナミに見つめられ、ハントはまた言葉を詰まらせる。
――露出多いから着てほしくない。
なんて、正直に言っていいわけがなかった。
ハントからして、これはあくまでも買い物の荷物もち。もちろんナミとの会話は楽しんでいたが、この買い物もナミ曰くの『先客』に服を見せるためのものと思っていた。
だから『着てほしくない』なんて正直にいえなかった。むしろなんでそんなことをハントに言われなければいけないのかとナミに言われるのがハントは怖かったからだ。
ハントが感想をなかなかいえなかった理由はそれだけ、ただそれだけ。
「……」
だが、じっと感想をひたすらに待ち続けそうなナミの態度に、このままでは埒が明かないと観念したのか、ハントはため息を吐き出した。それから顔を明後日のほうへと向けて呟く。
「似合ってた……でも、露出が多いから着てほしくなかった」
「え」
「ナミが着てた服に対する俺の感想は全部それだった」
「……それって」
「……本当につまらないとか思ってたわけじゃないぞ、どういう言い回しをしたらいいかわからなかっただけだ」
ナミの方へ顔を向けることなく小さな声で吐き出された言葉、それが本音だということは彼を見てさえいれば一目瞭然だった。
「ねぇ、ハント?」
「……」
――それって独占欲?
明後日を向いたまま、恥ずかしいのか気まずいのか、とにかくナミへと顔を向けようとしないハントがおかしくて、彼女はその言葉を呑み込んだ。
その様子に、ハントがおずおずと話しかける。
「……黙り込まれると怖いんだけど」
「んー?」
「いやいや絶対何か言おうとしてじゃんか」
「んー?」
「さっきどこかで見た光景だな!」
「んー?」
「会話のキャッチボールしようぜ!?」
上機嫌なナミと、そんなナミの様子にほっとしたハントがまたかしましく道を歩く。
楽しそうな彼らのやりとりを、道行く人々が通り過ぎるたびに笑みを浮かべて見守る。
「
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