29, その日
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を掛ける前に、ダッカーが罠解除スキルでボックスの扉を開ける音が響き渡った。
それは一瞬の出来事だった。
キリトの叫びはけたたましいサイレンによってかき消された。
キリトが食べていたホットドッグを放り投げ、部屋の中へと駆け込んでいく。
咄嗟に私も中へ駆け込み、ちょうど正方形の部屋の中に入った所で背後の扉が唯一の通路を閉ざした。
私達六人を真っ赤な光が包み込んだ。
警告の光はユックリと五度ほど瞬いてから一面を赤く染め上げた。私達が入った通路の向かい端の壁がユックリと開いていく。
中から行軍してくるのはおびただしい数のダークロム・ドワーフ。
その後ろには大量のゴーレムが召喚されている。
モンスターたちはみるみると数を増やし、私たちの周りをぐるりと取り囲んだ。
「みんな、転移結晶で脱出するんだ」
ダッカーがすぐにタフトの名を叫んで青色の結晶を頭の上へと掲げた。
だが、結晶は何度叫んでも光を一瞬すら帯びることはない。
恐怖に揺れる私も転移結晶を使ってみた。
25層以降でようやく解禁された究極の安全手段は一切の光を帯びなかった。
咄嗟にポーチの回復結晶も使おうとしてみるが、こちらも全くつかいものにならない。
「キリト、ケイタ。クリスタルが使えないよ」
「クリスタル無効化エリアか!!」
半狂乱になりそうな私の肩にケイタの手がユックリと乗った。
「大丈夫だ。みんな互いをフォローしながら戦えば、だ、大丈夫だ」
ガチガチと歯がかち合い、手は小刻みに震えている。
驚いて、ケイタの方を見ようとした時に、キリトが来るぞ、と叫んだ。
振り下ろされる岩石の腕をなんとか盾で押し返した。
その場でとどまろうとして、左から迫るピッケルの多さに背筋が凍った。
こんなの……防げるわけがない。
「おおおおおお」
その時、私の横を雷のような爆音が通り過ぎていった。
通り抜けたのは一筋の風。
私の横にいたドワーフの群れをキリトが見たこともないソードスキルで粉砕していた。
「サチ!!ケイタ達と絶対に離れるな」
私達の間に湧いてくるモンスターの群れに遮られ、キリトの姿が見えなくなる。
怖くなって叫ぼうとしたけれど、再びやってきたドワーフの群れに私はそれどころではなくなってしまった。
盾で弾きながら、みんなの元へとかける。テツオが盾となってササマルとケイタが迫る敵の群れをなぎ払っていた。
「みんな、無事?」
その一言にみんなの表情が一気に曇る。
その足元にはモンスターのものでは有り得ない一振りの短剣が転がっていた。
――そこにいるのはテツオ・ケイタ・ササマルの三人
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