第三十二話
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けをあっという間に終わらし、そうすると彼女は座長らしき恰幅のいい男に何か言ってから走ってこっちにやってきた。
「あんたさっきの舞台で結構おひねり入れてくれたって親方言っててさー、ちょっとなら遊んできてもいいって!」
花が咲いたみたいなぱぁっとした笑顔でこの子は言って駆けだしたので俺も一緒に走りだした。
走り疲れたのかちょこんと座りこんだ彼女の横に腰を降ろすと
「俺はミュアハって名前、レンスターっていうここからずっと東の国からここの士官学校ってところに留学してるんだー」
「ふーん、あたしはシルヴィア。 どこで生まれたのかお父さんもお母さんもわからないの」
急に憂いと翳りのある表情を浮かべてから
「でもね!あたしには一座のみんなと踊りがあるから毎日たのしーんだよ!」
またぱぁっと笑顔を浮かべると彼女はすっくと立ち上がり、その場でくるっと身を翻らせた。
「うん、すっごい、いい踊りだった!」
「でしょでしょ!」
俺たちはいい雰囲気でしばらく語りあっていた。
おなかを空かしていたのか?食べ逃してくたくたになったクレープみたいなものをシルヴィアに取り上げられて喰われてしまった。
こんなのでも"おいしいよ?"って言ったのがまたかわいらしかった。
「……それにしても、見て来たみたいにウソつくのがうまいんだから! そうやっていろんな女の子騙してきたんでしょ?ミュアハが王子だなんて冗談ケッサクすぎー」
「おいおい、そりゃないな、今からほんとのこと言うからよく聞いてくれよ」
「今度はなによー」
シルヴィアは笑いながら問い返した。
「いいか、ヴィア。お前は…本当は……」
「ほんとうは?」
「グランベル六公爵家のひとつ、エッダ家の公女。姫様なんだよ!」
「ちょっとー、なにそれ、口説くならもっと気の効いたこといいなさいよ!もぅ〜。あーおかしい」
笑い苦しんでいるシルヴィアだったが急にまた翳りのある表情を浮かべて
「でもさ、ミュアハの士官候補生っていうのはほんとだと思うから言うけど…あのね……その…やっぱりゴメン!」
「ん?…何か事情がありそうだな、言ってみなよ」
「だって、今日知り合ったばっかなのに頭おかしーっておもわれちゃうもん」
「言うだけならタダだし、それに頭おかしいなんて思わないって」
「…じゃ、言うね………お嫁さんにして、あたしをどこかに連れてって…」
「…おかしくなんて、ないよ」
思わず俺は彼女の頬に手をやり、なるべく優しく撫でてやりながら、いつのまにか流していた涙も拭ってやった。
「…あのね、親方はいいひとだよ、わたしを拾って育ててくれたんだもん。
そりゃ、機嫌次第で鞭でぶたれるのは嫌だけ
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