第三十二話
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あったので、マグニさんと出会ったカフェに顔を出し、しばらく座学で使う教本を読んだりして時間を潰した。
そうして立ち食いできそうな焼き菓子をテイクアウトして見物に行ってみた。
こういう娯楽のようなものって本当に久しぶりで、ジャグリングだとか火を吹くパフォーマンスとかに心を奪われちゃいましたね。
見世物小屋とか変わった物もあったが…人権ってやつが無い時代だからこその蛮行と言い捨ててしまうのは現代社会の価値観だとそうなのかもしれないけれど、自分の特性って奴で稼いで食べて行くんだもの、かわいそうとか思う方が失礼かも知れない。
そんな愚にもつかぬことを考えながら見物したせいか誰かとぶつかってしまった。
「大変ご無礼しました。申し訳ありません」
反射的に謝ったけれど俺の上着の裾のほうが何かの飲み物でぐしょぐしょになってしまった。
ぶつかった対象とおぼしきはかわいらしい少女だった。
「ちょっとー、どこ見てるのよ?あたしのサワーっとしたのが台無しじゃないのー!」
飲み物がからっぽになった杯をぶんぶんと振りまわすと滴の一部が顔にかかった。
「これは重ねて申し訳ない、わたしの上着があなたの飲み物を勝手に飲んだようです、これで弁償できないでしょうか?」
懐の財布から小銭を出して渡そうとすると
「ふーん、ちょっとは面白いこと言うじゃないの、サワーっとしたのは売り切れちゃったからコレで我慢してあげるわ」
美少女はそう言うと俺が小脇に抱えた小さな紙袋に入っている焼き菓子を取り上げてぱくぱく食べ始めながらどこかへ行ってしまった。
こういう時は大抵スリに気をつけなきゃならないなと思って通りから少し離れて確認したが財布も教本が入った鞄にも異常は無かった。
いったん俺は一座から離れて屋台でクレープみたいなものを買うとまた見物に戻った。
デパート屋上のヒーローショーって訳じゃないけど、簡単な演劇みたいなのが始まったのでそれを眺めていると先程の美少女は踊り子のチョイ役で出演していた。
その踊りはまだ拙さがあっても見終わったあとほんわかいい気分になった。
演目が終わったあと座長がおじぎをしながら大きな帽子を観客に向けたので俺は他の観客のように幾許か小銭を投げ入れ拍手をした。
見終わった観客が引いて行くと、辺りは観客が演目を見ながら飲食して散らかした跡があり、この一座はその掃除や自分たちの後片づけをしはじめた。
「さっきのお詫びに手伝わせてよ」
俺はそう言うとあの少女がやっていた会場のごみ拾いを手伝った。
「ふーん、いい心がけじゃないー、それともあたしをデートにでも誘うつもり?」
「そう、ご名答! 早く片付けば休憩時間が増えるだろ?」
「バッカじゃないのー?でも、気が向いたから付き合ったげる」
くすくす笑う彼女と片づ
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