Episode1 お人好し
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久しく寝床にし続けているカビ臭いベッドに体を投げ出した。
ホルンカの村には、あまりこのように寝泊まりができる場所はないのだが、たいていのプレイヤーはほとんど滞在しないので村の外れにある、この無人の家は我が物顔で使わせてもらっている。
ベッドがギシギシいうのを無視して足を2、3度バタバタとした後、大きく息を吐き出して脱力した。
「結局、断れてねぇじゃねえか…」
あの家で聞いた少女と思われる子の咳の音が耳を離れない。…あれがNPCだというのだから、まったくやり切れない。
これでクエストをキャンセルすることに挫折したのは……何度目だろうか。正直数えていられない。
「明日頑張るって…ねぇ。ははっ…笑えるな」
まったく顔が笑えていないのだが、そう呟いた。これだって何度目か分からない。
クエストというものは基本、プレイヤーの任意のタイミングでキャンセルできるものだ。一部例外もあり、受けたが最後、クエストを完了までやり抜かねばならないようなものもあるが、今回はその例外には当てはまらない。
普通におかみさんに「これ辞めます!」と一言告げれば終わるものを、俺はぐだぐだ引きずっている。
このような事象を招いているのは、ひとえに俺自身の問題である。頼みを断れないこの性格……と若干『運』に見離されている感はあるが。
このクエストは完了に《リトルネペントの胚珠》というアイテムが必要になる。ホルンカの村付近に棲息するリトルネペントがドロップするのだが、少し条件があり、ごく稀に出現する『頭に花の咲いた』リトルネペントしかドロップしない。
まぁ、出現率もドロップ率も所詮ゲーム上に設定されたものであり、0%ということはないのだろうが……ここ数日ではそれすらも怪しい。
「…やめた、寝る!」
このままではどうにも思考が「俺だけドロップ率0%なんじゃね?」のような所に至りそうだったので、無理に思考を切って徐々に迫りつつあった睡魔に身を任せた。
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