第二話〜王とは〜
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心得よ」
チリンと鈴の音が鳴り響く。
すると先ほどと同様に甘寧の姿が掻き消える。しかし江が慌てる様子はまるでない。
ガキッ
「なっ!?」
思わず驚きの声を漏らしてしまう甘寧。
彼女の全身全霊を込めた急所の一撃は、左手に持たれた江の大剣によっていとも簡単に防がれたのだ。
「圧倒的な速度で敵の急所を狙い、一撃で仕留める。その闘い方は戦場において重要なことです。…しかし」
江はスッと左手の力を抜く。
すると今まで押し負けまいと得物に力を込めていた甘寧の体が支えを失い、前のめりになる。その隙は致命的なものだった。
江の手刀が甘寧の右腕に放たれ、握られていた得物がカランと乾いた音を立てて地面に落ちる。
そのまま江は甘寧の服の襟をつかむと片手で地面にたたきつける。
「がはっ!」
すさまじい衝撃をその小さな体に受けた甘寧は息を漏らす。
そして気づけば、首筋に冷たいものが押し当てられている。ゆっくり眼を開け、確認してみれば案の定大剣であった。
「速度を得るためには防具は軽装、そして攻撃も軽いものとなってしまう。更には、その軽武装により、狙いが明らかです。防がれたときのことを考えておく必要がありますね」
敵である甘寧ににっこりとほほ笑みかける江。
甘寧はただ呆然とその笑みを見つめていた。
しかし江はそんな様子に気づかずに宣言した。
「敵の首領・甘寧、この朱君業が生け捕った!」
そしてこれが戦の終わりを告げる合図となった。
―――――――――――――――――――――――
「どうかお願いいたします」
周囲にいる人間は、将兵問わず皆呆然としている。それは捕えられた賊たちにも言えることだった。
今自分たちの目の前で繰り広げられている光景はそれほどに珍しいものだったのだ。
「俸給などいりません。どんな命令でもお引き受けいたします。どうか配下にお加えください」
あの鈴の甘寧が頭を下げて嘆願しているのだから。
しかもその相手が
「頭を上げてください。私は文台様の部下ですから、私の一存では何も言えないのです」
江である。
主である桃蓮を差し置いての嘆願に江は驚き、周囲は凍りつく。そんな中ただ一人、桃蓮だけがニヤニヤといやらしい笑みをこぼしていた。
「江の思うとおりにするといい」
「なっ!?」
予想外の事態に江には珍しい驚きの声が漏れる。
江は腕組みをし、しばらく考えたのち何かひらめいたような表情で口を開く。
「そうですね。孫権様に仕え、そしてよく支えることが出来たのであれば願いをかなえましょ
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