第三十一話
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ービスが変わり映えしないので王宮寄りの方へと足を伸ばしてみた。
特に目を引く何かがあった訳では無く偶然選んだその店に入ると、訪いを告げる鈴の音が耳に心地よい。
一見さんお断りの店の恐れもあったが、まばらな客は俺のほうを見て威圧をするでもなく、それぞれの時間を過ごしていた。
給仕に望みのものを注文し、本を取り出すと読み始める。
頼んだ茶と焼き菓子が届くとそれぞれ一口ずつ味わい、その味を褒めておいた。
昼を告げる鐘が鳴る前に1度茶の代わりを頼み、昼食時間から少し外れたあたりで給仕を呼びメニューから軽食を頼むと、その給仕の戻り際に他の客が同じものを注文していた。
しばらくして給仕が俺に届けたのは注文したのとは違い、色んな種類のケーキとティーポットだった。
「申し訳ありません、食材のほうが足りなかったものでこちらでお許しいただけないでしょうか?」
給仕がそう言うので俺は受け入れて、いったん本や勉強道具を片づけていると、俺のあとに頼んだ客のほうに俺が頼んだものが届いていた…まぁ今日初めて来たわけだし常連さん優先でいいわな。
なんて思っていたのだが…
「あちらの方のほうが私より先に頼んでいたでしょう? お取り換えなさい」
「いや、しかし閣下」
「プライベートで訪れている時まで役職で斟酌しないでほしい」
「申し訳ありません!」
というやりとりの後、俺の頼んだランチセットが届いたのだが…そして店の主が出てきて先程の客に平謝りをしていた、その客は気にせず下がれと言っても恐れ入ってしまった店主は詫びていた。
俺はいたたまれなくなったので
「恐れ入ります、そこな紳士のお方」
「何用かね?貴殿もまさか、注文品を取りかえるようと申し出るつもりではあるまいか?」
「いえ、とんでもない! ご無礼を承知で申し上げますが、わたしの腹具合ではいささか量が多すぎるので、半分ずつ互いの注文品を交換いたしませんか?」
「なるほど。そういう策もありますな。これは愉快」
相好を崩すと痩せて神経質そうなその中年男性は俺の申し出を受け入れてくれた。
店主と給仕は俺とその客に礼を言うと下がり、俺はこの男と相席した。
「…なるほど、留学僧とはまるで違うと思いましたが士官学校の候補生どのでしたか」
「はい、レンスターという田舎ですがそこからお招きに預かりました。ミュアハと申します」
「私はレ、いえマグニと申す者で王宮勤めをしておりますわい。ふぅむレンスターと言えば我らが今、口にしている多くの食物の産地ですな、感謝いたしましょう」
「いえいえ!とんでもない!購入していただくグランベルあってのものです、こちらこそ感謝申し上げます」
「持ちつ持たれつ、いつまでもそうありたいものですな」
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