第二十三話 告白、想定外
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
最低だ、最低だ、最低だ。
りんかは逃げながらそう思う。
今も戦い続けているであろう少年を助けに行かなければ、行かせなければならないのに。
嫉妬に駆られている自分は、少年を見捨てるような真似をしでかした。
醜悪で、劣悪で、最悪だ。
りんかは走ったまま自分を罵り続ける。
とめどなく流れ出す涙は、そんな資格すらないと分かっていても流れ続ける。
「りんか!待て!」
大好きな人が自分を追いかけている。
それがさらに自分の罪深さを増幅させる。
なんで追いかけてくるのか。
醜い自分を見られたくなくて逃げているのに。
追いかけてこなくていい。私はこのまま………。
「待てって言ってるだろ!」
右腕が急に後ろに引かれる。
腕が引かれた勢いのまま、体は大好きな人の腕の中へ投げ出される。
「どうしたんだ?りんか。」
和也は強く優しくりんかを抱きしめる。
その強さはりんかがどれだけ拒絶しようとしても揺るがないほどの強さだった。
どれほど抵抗しようと抱きしめる力に揺るぎは全くなかった。
しばらくしてもはや抵抗は無駄だと悟ったのか、りんかは少し息苦しさを感じつつも、抵抗していた力を抜く。
「どうしたんだ?りんか。」
和也はもう一度同じ質問を繰り返す。
優しく諭すように。
りんかもそれを聞いて答えざるを得ないと思ったのだろう。
己の醜さを吐露する覚悟を決めて、答えることにした。
「………ごめんなさい。」
「りんか?」
「引きとめて……ごめんなさい。……ごめんなさい。」
りんかはうわごとのように謝り続ける。
引きとめたことで誠也を見捨てるような格好になってしまったことを何よりも後悔し、詫び続けていた。
「りんか。大丈夫だ。」
しかし、対する和也の返答は力強かった。
りんかをさらに強く抱きしめ、言葉を続ける。
「誠也は強い。俺よりも。それにアリスも向かってくれてる。だから少しくらい遅れても大丈夫だ。」
「でも………!」
「大丈夫だ。誠也はよっぽどじゃなければ負けない。だからこそ『管理局の白い最終兵器』なんて呼ばれているんだからな。」
和也はりんかに気に病むことはないと力強く諭す。
誠也が本気で制限なしに戦うのなら和也よりもずっと強い。
正確無比な無数の魔法弾に一撃必殺の砲撃は、和也を為すすべもなく完封したことすらあったのだから。
「………。」
りんかもそんな和也の信頼を感じたのだろう。
和也を信じ、少しだけ肩の力を抜く。
けれど、誠也のことがなくなったとはいえ、りんかの嫉妬が無くなるわけじゃない。
「りんか。なんであんなに辛そうな表情をしていたのか。俺に教えてくれないか?」
「………。」
「りんかがあの時何を思っていたのかは俺には分からない。だけど、りんかが何か辛い思いをしていたことくらい分かる。だから
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ