第三話 〜凌陽関〜
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
概昼はこの部屋で事務の仕事に追われている。
多分、記憶はないがまともな挨拶をまだ済ませていないはずだ。
それにこれから僕がこの関で暮らすにあたっての事を色々聞かなければならない。
トントン
『なんだ』
中から父さんの声がした。
僕は戸を開いた。
『父さん』
『おぉ帯よ、もう起きてたか』
事務机に資料を並べた父さんが椅子から立ち上がり、こちらへ来る
同じ家族なのに父さんの背は並にあり、僕と僕の前に立つ父さんが一度手を繋げばなんとも微笑ましい光景に見えるだろう。
まあ手を繋いだりはしないのだが。
成人ですし。
大人ですし。
『仕事を片付けてからお越しに行こうと思っていたが、中々終わらなくてな』
『別にいいよ、仕事終わるまでまってようか?』
『いや、折角席を立ったのだから休憩にするよ』
そう言うと父さんは背を伸ばした
骨が面白いように鳴るあたり、相当な時間席を立たなかったのだろう。
『なんの仕事してたの?』
『ん?いやな、商人達から宿舎の増設依頼が来ててな。…まぁ、見ての通りここには空地など既に無いのものだから古い宿舎を併合できないものかと探しておったんじゃ』
『大変だね』
『そんな事言ってられるのも今の内だぞ?いずれお前もやる事になるのだからな』
『一日机と睨めっこなんてやだな…』
『案外やってみると楽しいもんだぞ?』
『え〜、そんなの言うのは父さんくらいだよ』
『いやいや最初はきつかったが、小さい街がどんどん大きくなって行くんだ。それが子供を育てるみたいでなんとも…』
『実の息子をほっといて良く言うよ』
『いや、それは…』
わざとムスッとした態度を見せると父さんが本当に困った顔をする
父さんはこういう人だ。
『…っぷ、冗談だよ。本気にしないでよ父さん』
そうだとも。
父さんはいつも自分の事より周りの事を考えてくれている。
僕が叔父さんに預けられていたのも、まだこの関に赴任当初は治安が今より良くはなく、毎日のように狭い通路で商人と住民との間で揉め事が起きていた。
更には住民側が自分達の正当性を主張する為に組合なる組織を作り上げて暴力で商人達を追い出そうとするなど散々であった。
そんな状況では息子の相手はおろか、息子の安全すら確保してあげれないということで僕は叔父さんに預けられる事になった。
それに治安が良くなった後だってこの関は交易の要にある拠点である。
やる事は山済みなのに間を見つけてはわざわざ関に僕を呼んで相手をしてくれた。
そこまで考えてくれている父さんを嫌いになれるわけがない。
『僕は父さんの息子で鼻が高いよ』
『すまんな』
『いいって。それにこれからは一緒に住むんでしょ?気にならないよ』
『うむ、これから
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ