第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十九 〜宴の夜〜
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方ないと思うのです」
「厳しさは、優しさの裏返し。歳三様の本質は、他人への思いやりですからね」
「でも、お兄さんを愛しているのは、風達なのですよ? それは、忘れないで欲しいのです」
「忘れてなどおらぬ。……だが、確かに軽率であったやも知れぬな、済まぬ」
二人が、手に力を込めた。
……それだけ、想いが強い、という事か。
「中に戻るぞ、二人とも。本当に身体に障る事になる」
「勿論、今日はお兄さんと一緒ですからね? 駄目と言われても、風はこの手を離すつもりはありませんから」
「私も、です。歳三様、今宵はお側に」
「……わかった」
……朝か。
二人は、まだ眠りから覚めていないようだ。
起こさぬよう、そっと臥所を抜け出す。
部屋を出たところで、徐晃と出くわした。
「土方殿、お目覚めですか?」
口調が変わっている事に気付いたが、それを指摘するのも野暮であろう。
「徐晃殿か。このような時分に、どうした?」
「……いえ」
頬を赤らめながら、部屋の方を見る。
口調も昨夜と違うようだが。
「土方殿。稟は、果報者ですな」
「…………」
「貴殿のような、強さと優しさを兼ね備えた主君に巡り会えたのですから。本当に、今は満ち足りているようです」
「いつから、此処に?」
「二刻程、ですかな。目が覚めたら、稟が臥所に戻った様子がなかったので。恐らくは、土方殿のところだろうと思いまして」
「なるほど。……私と稟は、そのような仲でもある。これは、隠すつもりもない」
「ええ。……土方殿」
徐晃は、その場で片膝をついた。
「貴殿の事、見させていただきました。どうやら、この『飛天戦斧』を預けるに足る御方と見ました。私を、改めて貴殿の麾下にお加えいただきたいのです」
「そうか。私に取っても、願ってもない事だ」
「ありがとうございます。今後は、疾風、とお呼び下さい」
「わかった。では、私も歳三で構わん」
「では、歳三殿と。後で、他の方ともご挨拶を」
「うむ」
本来であれば、曹操の重臣となる筈だった徐晃が、我が軍に加わってくれた。
稟も認める、優れた将だ。
如何に使いこなせるか、鼎の軽重が問われる事になる、な。
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