第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十九 〜宴の夜〜
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。……稟。もうすぐ、黄巾党も終息に向かうだろう。その後、どうなっていくだろうな?」
「そうですね。ご想像の通りかと」
ふっ、お見通しという訳か。
「まだ、戦乱の世は続く……か」
「ええ。漢王朝があの有様では」
私が劉備ならば、その延命に働くか、もしくは血筋を利用して名を挙げるか……そんなところだろう。
だが、私には漢王朝そのものが、縁遠い存在。
正直、何の感慨もない。
積極的に、その終焉に手を貸すつもりもないが、遅かれ早かれ、何らかの関わりは生じるだろうな。
「くしゅん」
寒いのだろう、稟がくしゃみをする。
「部屋に戻った方がいいな。稟、体調は大丈夫か?」
「体調ですか? 今のところは、特に」
「そうか。それならいいが、くれぐれも無理をするでないぞ?」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
城壁を下りると、
「……ぐう」
何故か、風がそこにいた。
しかも、立ったまま寝ているのだが……いつもながら、器用な事だ。
「風。起きろ」
「おおう。お兄さんと稟ちゃんの逢い引きを見ているうちに、ついうとうとと」
「ふ、風!」
「稟ちゃん。お兄さんの事が恋しいのはわかりますが、抜け駆けはダメですよー」
「……風。人聞きの悪い事を申すでない。稟は、私を気遣って探しに来てくれたのだぞ?」
「おやおや、そうですかねー? では稟ちゃん、全く他意はなかった、と言い切れますか?」
「そ、それは……」
目を伏せる稟。
「お兄さんもお兄さんですよ? 風というものがありながら、公孫賛のお姉さんと接吻とは」
「こ、接吻? 歳三様、それは本当ですか!」
「風。まるで見て来たように言うではないか」
「風に隠し事は無駄ですよ。風は、お兄さんの事なら何でもお見通しなのです」
早くも露見するとはな。
……だが、私は後ろめたい事は、何もないのだ。
「あれは、白蓮からの礼。礼を受け取らぬは、あまりに非礼だ」
「おおー、しかも真名を預かるとは。やれやれ、お兄さんにも困ったものです」
「で、では、本当に接吻を? 歳三様、どういう事ですか!」
「落ち着け、稟」
白蓮からは内密に、と言われたが、仕方あるまい。
「確かに、真名も預かり、接吻も交わした。だが、全ては白蓮から私への礼、という事だ」
「で、ですが、いくら礼とは言え……こ、接吻とは……」
「稟。私は、白蓮にそれ以上を求めてはいない。そうであれば、この場にこうしている訳がなかろう?」
「口では、何とでも言えるのです。……お兄さんが本心からそう言うのなら、態度で示して欲しいのです」
風はそう言いながら、空いた手を、握ってきた。
「お兄さんは、みんなに愛されているから、それは仕
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