第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十九 〜宴の夜〜
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うな、僻地の太守……そんなところだろうけど」
……恩賞か。
私自身は栄華を望まぬが、従う者がいる以上、受ける事になるだろうな。
「けど、高官共は、それですら私腹を肥やす手段にするだろうな」
「地位を保ちたいのなら賄賂を寄越せ。或いは、あちこちに金をばらまいたと恩を着せる。そんなところか?」
「……わかっているならいいさ。しかし、見てきたように言うが、そんな事まで探らせているのか?」
「いや。我が国でも、似たような話は枚挙に暇がなかったのでな」
「そ、そうか……」
この御仁では、あの魑魅魍魎の世界で生き抜くのは難しかろう。
尤も、私も願い下げだが。
「と、ところでさ」
妙に改まってから、
「土方。お前に預けたい物がある」
「預けたい物?」
「そうだ。私を盛り立ててくれ、いろいろと尽力してくれた。それに、私も答えたい。だから、今後は白蓮、と呼んでくれ」
真名か。
「良いのか?」
「ああ。……それから、もう一つあるんだが、受け取って欲しい」
「真名だけで十分だが?」
「い、いや。これは私の個人的なものでな……」
そう言いながら、白蓮が近付いてきた。
手を伸ばし、私の頬に触れる。
「い、嫌ならいいんだ。どうせ、私は皆みたいに美人でも、豊満でもないしな」
「理由を聞くのは、野暮か?」
「……私を、立派と認めてくれた男は、歳三が初めてなんだ。それも上辺だけじゃない、心からの言葉……嬉しいんだ、私は」
「白蓮……」
柔らかい物が、私の唇を塞ぐ。
白蓮の息遣いを間近に感じながら、その肩に手を廻す。
ゆっくりと身体を離す。
「あ、あのさ。土方」
「歳三で構わん」
「い、いいのか?」
「真名を預かった相手に、片手落ちをするつもりはないぞ」
「……わかったよ、歳三。こ、この事は、出来れば内密にしてくれないか? そ、その……」
「ふふ、心配せずとも良い。私も、そんな無粋な男ではないつもりだ」
「……ありがとう。では、私は戻る」
去っていく白蓮の後ろ姿を見送りながら、ふと思う。
白蓮がこの先どうなるかはわからぬが、これからもずっと、共に戦う仲間になるのだろう、と。
「歳三様、ここでしたか」
稟の声で、我に返る。
月が、だいぶ傾いていた。
「酒宴は、まだ続いているのか?」
「いえ、流石にお開きに。皆、休みましたが、歳三様のお姿が見えませんでしたので」
「そうか。探しに来たのか」
「ええ。部屋に戻って下さい、かなり冷えてきていますよ?」
そっと、私の手を取る稟。
「こんなに、冷たくなるまで。一体、どうされたのですか?」
「……いろいろと、考えていた」
「いろいろ、ですか?」
「うむ
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