第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十九 〜宴の夜〜
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」
「わかった。じゃ大将、俺は廖化と話をしてくる」
入れ替わりに、稟がやって来た。
「ご苦労さまでしたね、疾風(徐晃)」
「ああ」
二人は、杯を交わす。
「そう言えば、楊奉殿はどうなったのですか?」
「……そうだな。その事を、話しておこう」
徐晃は、杯を一気に干してから、
「残念ながら、楊奉殿に会う事は叶わなかったのだ」
「見つからなかった、という事ですか?」
「……いや。既に、官軍に捕らえられていたのだ。都に送られ、既に首を打たれたと」
黄巾党の将として、既に手が回っていたという事か。
徐晃の話の通りであれば、惜しい男であったようだが……。
「それで、こちらに来たという訳ですか」
「もともと、部下を預かって貰っていたからな。それに、私にはそれしか、自分のすべき事が見つからなかった」
「そうか。だが、この後はどうする気だ?」
「この後?」
「そうだ。貴殿程の武人が、二千とは言え手勢を連れて動けば、人目につかぬ方が無理というもの」
「……そうだな。確かに、行く末は考えなければならんか」
「疾風。私と一緒に、歳三様にお仕えしませんか?」
「稟?」
「実は、あなたの事は以前、歳三様に推挙した事があったのです。歳三様、覚えておいでですか?」
稟の言葉に、私は記憶を巡らせる。
「もしや、洛陽の人物の話か?」
「そうです。こんな形で再会するとは思っていませんでしたが。疾風程の人材を、埋もれたままにしておくのはあまりにも惜しいですから」
稟の申す通りだろう。
武の方は、もう確かめるまでもない。
それに、稟の推挙の切欠もある。
本人次第だが、欲しい人材であるのは間違いない。
「私からも、頼みたい。今は義勇軍、根無し草ではあるが、民を救うという志はどの諸侯にも劣らぬつもりだ」
「…………」
徐晃は、思案顔で宙を見ている。
「返事は今すぐとは申すまい。心が決まれば、その時で良い」
「でも疾風。私が尽くすべき主として、歳三様を見込んだ事、よくよく考えて下さい。後は、あなた次第です」
「……わかった。それまでは、ここにいさせて貰うとする」
酒宴はまだ、続いていた。
そっと抜け出した私は、城壁の上に登った。
吹き抜ける風は、少々肌寒い。
だが、酔い醒ましには悪くないな。
「何だ、ここにいたのか」
公孫賛の声がした。
「主役がいないから、どうしたのかと思ったぞ?」
「あまり、酒は過ごせる方ではないのでな。貴殿こそ、太守が抜け出して良いのか?」
「私がいたんじゃ、みんな気を遣うだろ? それに、ちょっと夜風に当たりたくてさ。隣、いいか?」
「ああ」
微かに、酒の香りが漂う。
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