第72話 そして、伝説へ・・・
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次に、その言葉を理解しても自分に言われたものではないと確信して、周囲に該当者がいないか見渡していた。
周囲には、自分しかいないことを確認した男は、あわてて私に確認を求めてきた。
「俺と結婚してくれということかい」
「はい」
顔が赤くなりながらも、私は頷いた。
この人は、頭の回転が早いほうだけど、こと恋愛に関しては、致命的なほど鈍い。
今まで、周囲の女性からナイフで刺されなかったのが不思議なくらいだ。
だからこそ、逆に私がプロポーズをすることが出来た。
私は、勇者オルテガの娘として産まれた。
あの日が来るまで、普通の女の子として過ごしていた。
だが、あの日から全てが変わった。
眠い目をこすりながら、母親に連れられてきたところは、アリアハンの王宮だった。
王宮に来たのは2回目だ。
前回は、昼間にきたけど、明るくにぎやかな雰囲気だった。
夜の城内は荘厳とした様子で、夜中だった事から、少し怖く感じた。
私は母親と王様の前で待っていると、1人の兵士が王様に報告をしていた。
「おそかったな。
して、どうであった?」
王様の声は、威厳に満ちていたが、子どもの私でも不安を隠すことができなかった。
報告する兵士は、疲れているのか王の前で緊張しているのか、声が小さく聞き取りにくかった。
「はっ・・・。
申し訳ありません。
火山の頂上には我々だけではとてもたどり着けず・・・」
だが、兵士は私の耳を疑う事をいった。
「オルテガどのの、ご遺品は、全くみつけられませんでした」
父親は、世界最強の勇者ではなかったの?
母親が寂しそうにしていた私に、いつも話してくれたことだった。
そして、王の言葉も、私の気持ちを打ち壊す内容だった。
「そうか・・・。
しかし、オルテガほどのものがやられるとは」
そして、王は私たちに向かって話しかけてきた。
「ご家族にもなんとおわびを申し上げればよいのか・・・」
王は玉座から立ち上がると、母親に向かって頭をさげた。
「オルテガ殿の奥方。
まことに申し訳ない・・・」
母親は、王様の言葉に返事した。
だけど、私の左手を握っている手が震えていた。
「ありがとうございます王様。
私も覚悟はできておりました。
それに夫は立派に戦いました。
きっと本望だと思います」
王様は、母親の言葉に安心したのか、緊張をゆるめていた。
そして、寂しそうにつぶやいた。
「しかし実に惜しい命をなくしたものだ。
もはや魔王にいどめるようなものはおらぬ。
我々には、もう希望がないのか・・・」
周囲に沈黙が広がってゆく。
父親が、死んだのだ。
他の誰が行っても一緒だと思った。
誰もがそう思っていたようで、しばらく沈黙が王宮全体を包み込んだ。
沈黙
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