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ラインの黄金
第一幕その六
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第一幕その六

「それに囚われそして」
「そして。何だ」
「遠くに出て他の女と会い」
「そんなことは知らない」
 このことに対してはここでもとぼけてみせる。
「全くな」
「立派な住まいや心地よい家庭が貴方をつなぎ止める筈だったというのに」
「私もそれは否定しない」
「しかし貴方は休息をそこに求めず」
 つまり家庭を顧みなかったのである。彼は。
「城を築かせ護りやそういったものを考え支配や権力を見て」
「神としては当然だ」
 妻の言葉をかわそうとするがそれは苦しかった。
「その城は嵐の元となっているのではありませんか?」
「あの城がか」
「そうです」
 ヴォータンは遠くを指差した。天高くを。見ればそこには下半分が月のようになり上半分はそびえ立つ無数の高層ビルにより成り立っている巨大な城が浮かんでいた。
 その城を指差し。彼等は話すのだった。
「あの城がです」
「あれこそ我等に相応しいではないか」
 ヴォータンはその城を見ながら話す。
「神々にな」
「そして憂いを常に巻き起こすのですか?」
「あの城に入れば憂いなぞなくなる」
「どうでしょうか」
 最初からそんなことは信じていないといったフリッカの言葉だった。
「そんなことは。今でさえそれが尽きないというのに」
「今だからこそ尽きないのだ」
 夫はこう強弁した。
「今だからこそな」
「それもあの城に入ればなくなると」
「その通りだ。それに」
「それに?」
「フライアもだ」
 今度は自分から彼女の名前を出してみせた。
「私は御前が思っているよりも女性というものを尊重している」
「信じられないわ」
 彼のことがよくわかっているからこその言葉だった。
「その言葉は」
「その証拠に私はフライアを必ず救おう」
「それならです」
 フリッカの言葉が強いものになった。
「すぐにフライアを助け出して下さい。是非」
「姉様!」
 するとここにだった。やはり白くまばゆいドレスを着た美しい女が駆けてきた。若々しくそのうえ気品のある雰囲気で顔立ちは完璧なまでに整っていた。豊かな金髪をなびかせ湖の色の瞳をしている。そして薔薇色の唇と頬も見せていた。その女が怯えた顔で来たのだ。
「助けて、どうか私を」
「フライア、どうしたの?」
「ファゾルトが来て」
「あの男が来たというの?」
「ええ。それで私を連れに来たと言って」
「ただの脅しだ」
 だがヴォータンはそれをこう言って終わらせようとした。
「それはローゲに任せておけ」
「ローゲですか」
 フリッカはその名を聞くとすぐに眉をしかめさせた。
「貴方はいつも何かというとあの男を頼りにされますね」
「自由な勇気が役立つ時は誰にも相談しなくてもいいがだ」
「他の時は違うのですね」
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