第63話 そして、葬儀へ・・・
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くことなく最後まで黙って話を聞いていた。
「・・・。ごめん、母さん」
最後は泣きながら謝っていた。
俺は、母との別れを覚悟していた。
愛する夫だけでなく、息子も失っていたという事実。
正直、この場で殺されてもかまわないと思ってもいた。
ソフィアは泣き出していた。
「ごめんなさい、アーベル」
ソフィアは、俺の手を握りながら謝っていた。
「か、母さん」
俺は困惑していた。
何故、俺に謝る必要がある。
「全て、私のせいなの」
ソフィアは俺に驚くべき事実を打ち明けた。
ソフィアは、若い頃、師匠のところで、魔法を学んでいた。
ソフィアは、師匠の教えにより賢者としてありとあらゆる魔法を習得していた。
だから、僧侶が覚える睡眠呪文「ラリホー」を使用できたのだ。
師匠は、ソフィアのたぐいまれな才能に惚れ込み、自分が身につけた全ての呪文だけでなく、自分がここにいる理由となった呪文をも教えたのだ。
「それが、召喚呪文だと」
「ええ」
ソフィアはうなずく。
師匠の話では、難破した船から漂流してきた少年を救おうとした魔法使いがいたが、蘇生呪文「ザオリク」や回復呪文「ベホマ」を唱えても少年の意識が回復しなかった。
魔法使いは最後の手段として、研究していた古代の呪文を唱えたところ、少年の意識が回復したという。
魔法使いが、意識を取り戻した少年に状況を確認したところ、少年とは別の存在が召喚されたことがあきらかになった。
幸い、魔法使いの家は、辺境にあったことから、事実は伏せられたまま、現在にいたったという。
ソフィアは、師匠の話を半信半疑で聞いていたが、念のためその呪文も習得した。
ソフィアはやがて、ロイズと結婚し、アーベルを産んで育てた。
「そして、事件が起こったわ」
アーベル少年が、父ロイズを迎えに行く途中で、城の堀に落ちた。
当然、ソフィアは「ベホマ」や「ザオリク」を唱えたが、アーベルの意識が回復することは無かった。
ソフィアは、最後の手段として、師匠から教わった召喚呪文を使用したところ、アーベルが息を吹き返したという。
ソフィアは、アーベルが回復したことをよろこんだが、やがて重い現実を知ることになる。
アーベルの仕草がおかしいのだ。
アーベルの記憶を「覚えてない」発言の真偽はわからないが、日常の仕草は、体が覚えているため、忘れることはない。
ソフィアは、その事実を理解すると絶望した。
それでも、俺をこの世界に召喚した責任から、俺を見捨てることなく今まで育ててきたという。
「結局、お互いに事実を知っていたと」
「そういうことね」
バカな話だ。
本当に、バカな話だ。
「俺達は、似ているな」
まるで親子だ。
「アーベル」
「母さん」
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