第62話 そして、勇者の凱旋へ・・・
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いや、ここでなにがあったかは、わかっている。
だが、確認しなければならない。
俺は王の隣に控えている大臣に尋ねた。
「今し方、落雷の音がしましたが、何がありましたか」
勇者は、俺の方に視線を向けたが、3姉妹が勇者に視線を向けると、勇者は王に一礼し王宮を去っていった。
「待ってくれ」
俺は、勇者をよびとめる。
勇者は俺を無視するかのように、そのまま階段をおりようとしていた。
俺は、素早く階段に回り込むと、袋からふたつの品を勇者に押しつける。
「・・・」
勇者は黙っていた。
いや、勇者はしゃべれないのだ。
昔、母親から聞いた話では、父親が死んだと聞かされた日からしゃべれないということだった。
俺は、勇者の顔を眺めるが勇者の表情から何も読み取ることが出来なかった。
3姉妹は勇者の後ろで様子を見ているが、今のところ手を出す様子はないようだ。
「光の玉と、聖なるまもりだ。
これからの旅に必要になるだろう」
「・・・」
勇者は頷くと、手渡されたアイテムを受け取り、階段を下りていった。
「・・・」
3姉妹は俺の行動を好奇心いっぱいの瞳で観察していたが、お互いの顔を見合わしてから、勇者に続いて階段を下りていく。
「繰り返し、聞きます。
ここで何がありましたか?」
俺は大臣のところまで戻ると、先ほどの質問を繰り返す。
「その、・・・」
大臣は言い淀んでいる。
「大魔王ゾーマですか?」
俺は、大臣に問いただす。
「なぜ、それを知っている!」
大臣は驚愕の表情で、俺に問いただす。
「下の世界で情報をあつめていました。危険性を報告するために」
「・・・」
「全ては遅かったようです」
俺が周囲を見渡すと、床のあちこちに黒こげの跡がある。
天井を見上げると、6箇所ほど穴があいている。
城を突き抜けた雷撃が近衛兵達を襲ったのだろう。
しかし、床には焦げ跡しか残っていない。
「死体すら、消し去ったのですね?」
大臣は頷く。
「俺の父である、ロイズも巻き込まれましたね」
「・・・」
王と大臣の表情で確認した。
俺は、王の間から立ち去った。
途中、セレンとテルルにあったが、俺は構わず自宅に戻った。
俺は自室の壁を叩いていた。
「俺は、これまで何をしてきた!」
壁には、血が付いていた。
「全ては、無駄だった!」
右手の痛覚が感じられなくなっていた。
「タンタルまで犠牲にしたのに、助けることが出来なかった!出来なかった!
俺は、大馬鹿野郎だ!」
「アーベル!やめなさい!」
母ソフィアが、俺を見て叫んだ。
俺は構わず、壁を叩き続ける。
母親は背中から俺を抱きしめる。
「離してくれ・・・」
俺は、急に眠りに襲われる。
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