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ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第55話 そして、竜の女王の城へ・・・
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様。女王は眠りについております。また、女王はご病気の身です。おひきとり願います」
俺は、女性の抑制の無い声に驚いたが、女王が死んでいないことに安心して返事をする。
「かしこまりました」
俺は少々おおげさな身振りをすると、退室した。


女王の間を退室した俺は、目的の光の玉を眺めていた。
玉からは優しい光を発していた。
だが、熱はない。
一瞬LED電球の事が頭をよぎったが、光の玉の役割を思い浮かべて頭を横にふる。
光の玉に失礼な発想だ。

倒すべき相手、大魔王ゾーマは闇の衣を纏っている。
闇の衣を纏ったゾーマの力はすさまじく、魔法に対する耐性や自動回復の能力を備えている。
ゲームで遊んでいたときですら、闇の衣をまとったゾーマを倒したことがないほどだ。

その闇の衣を引きはがすアイテムがこの光の玉である。

闇の衣をはぎ取った大魔王ゾーマはそれでも強力であるが、俺達がキチンと経験を積み、戦術を間違わなければ、倒せない相手ではない。
勇者を誘拐したパーティが、魔王バラモスを倒す直前までに、俺達は訓練を積むことを考えて、城を出ようとした。
「みんながアリアハンに戻るまで時間はあるか」
一足先に船はアリアハンへ向けて出発したが、到着まで二日はかかるだろう。
3人での船旅だが心配はしていない。

聖水を大量に購入していることから、大型のイカのモンスター以外は恐れて近づくことはないからだ。
テンタクルスと呼ばれるイカのモンスターは、確かに強力ではあるが、出現率が低いことと、俺達の防御力が高いことと、テルルが使う即死呪文「ザラキ」にめっぽう弱いので十分対応が可能である。
もう少し、城内を歩き回ることにした。


「綺麗ですね」
俺は、近くの女性に声をかける。
声をかけられた女性は、俺の方をしばらく無言で眺めると、
「きゅ、急に何をいうのですか」
と、顔を赤くして騒ぎ出した。

俺は、何か変なことを言ったのか訝しみながら、声をかけた女性を眺める。
少し前に、竜の女王の間で声をかけられた女性と同じように、人間とは少し異なる雰囲気を纏っていた。
俺はまだ出会ったことはないが、天女と人間との間の存在のようなイメージを持った。
それよりも、この女性に弁明をしなければならない事を思い出し、話を続ける。
「綺麗なものを綺麗だと言うことをためらう必要がどこにあるのかな」
俺は相手を刺激しないように、努めて優しく話しかける。
怒っている相手に、こちらも感情を高めたらまとまる話もまとまらない。
俺がかつて、市役所窓口で対応したときに教わったことだ。

だが、この世界では逆効果だったようだ。
「よ、よくもまあ大胆と」
女性はこれ以上に無いほど顔を赤くして反応する。

「そうですか、失礼しました」

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