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ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第48話 そして、説得へ・・・(1)
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なんだろう、嫌な予感がする。いや、嫌な予感しかしない。
「お父さんへの説得よ」
テルルは目を輝かせている。
「・・・」

正直に言おう、途中から予想がついていた。
だが、確認しないといけない。
なぜなら、説得する相手は、キセノン商会代表のキセノンだ。
最近、アリアハン王家から借りている船を効率的に運用するようになり、すぐ近くのランシールとの取引で莫大な利益を上げていると聞いた。
俺が、国に船を貸与していることもあり、俺にも利益が回ってくるので文句は言わない。

将来、キセノン商会による、全世界の経済統合も近いかもしれない。
まあ、庶民にとってはトップが商業ギルドの長老連中から、キセノンに変わっただけという認識しか持たないだろう。
すでに、キセノンは商業ギルドの最年少幹部としてある程度の実権をもっている。

だから、その娘が盗賊になると知られたら、キセノン商会にとってはイメージダウンになるかも知れない。
テルルが俺に依頼するのは、キセノンに「商人の娘が盗賊になっても問題ない」と説得させることだ。
キセノンだけではなく、キセノン商会を利用する人々にも理解をさせなくてはならない。
当然だ、商人が最も恐れるのは「信用を失うこと」だ。

キセノンが若くして成功した最大の要因は、「一度口にした約束を、決して破らない」ことだった。
キセノンが若いとき、通常では納期に間に合わないと気付いた時に、定価の倍で、他の商店から買い付けてでも納期を守った伝説がある。
キセノンに商品を売りつけた商人は、「馬鹿なことを」と笑っていたが、結局金で買った「信用」で大きな商いを任せられ、成長するきっかけになったのだ。

だからこそ、今回の交渉は最も手強いものになると、覚悟した。
場合によっては、俺の冒険が終わる可能性もあった。
「わかった、テルル。なんとかする」
「ありがとう、アーベル」
俺の覚悟を感じたのか、テルルは俺の手を強く握った。



「・・・。アーベル」
「・・・。どうした、テルル?」
「どうしたと聞きたいのはこっちよ。いつまで手を離さないつもり」
どうやら、回想をしすぎたらしい。

いつの間にか、俺の方がテルルの手を握っていたようだ。
「ああ、すまない」
「べ、べつにいいわよ」
テルルの顔が赤くなっている。
「すまん、考え事をしていた。痛かったか?」
「だ、大丈夫よ」
テルルは、さらに顔を赤くしたが、そのことを追求しない方がいいのだろう。
俺はなぜか、そう確信した。

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