第33話 凱旋式
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「王様。ちゃんと、笑ってくださいよ」
「わかっているさ」
俺は馬車に乗っていた。
凱旋式の先頭にたち、両脇に群がる国民からの祝福を受けていた。
後ろには戦闘に参加した近衛兵達が、四列縦隊で延々と続いている。
隣に座る、近衛兵総統デキウスから指摘され、俺は笑顔をふりまく。
周囲から歓声が聞こえる。
「ロマリア王万歳!」
「勇者アーベル王万歳!」
「・・・。俺、魔法使いなのだが」
「皆は、英雄を勇者としてたたえているのです。さあ、応えてください」
俺は、右手をふる。
国民たちは、さらに歓声をあげる。
「ばんざーい!」
「ばんざーい!」
凱旋式。
戦いで、大きな戦果を果たしたものだけが得られる栄誉。
ロマリア王国の男なら、誰もがあこがれる。
俺は、この戦いでロマリアへのモンスターの進入を阻止したこと。
そして奪回計画を指揮し、成功させた成果で凱旋式に参加している。
俺はあまり祭りごとは好きではなかったが、凱旋式をやめるという選択肢は存在しない。
今回の成果を、国民の前で形にしなければ、改革の意味がない。
国民が成功を祝い、将来に希望をもたせなければ、先には進めないのだ。
隣に座るデキウスは、ウエイイ奪回にあたり、獅子奮迅の活躍をしたとして参加している。
「まあ、後ろで指揮するのが嫌なだけだろうがな」
近衛兵総統は、本来であれば、軍の指揮官として戦局をみる立場だ。
しかし、デキウスは戦闘が好きなので、最前線で暴れただけだ。
とはいえ、この男は兵士達から愛されている。
兵士達が怯えることなく戦えるのは、この男の力に違いなかった。
「いろいろあったなあ」
俺は国民の歓声に応えながら、魔王を倒したあとの事を思い出していた。
戦いが終わり、テルルやセレンが待機していた天幕に近づくと、テルルとセレンが抱きついてきた。
「アーベルのバカ!」
テルルは俺の体を叩き始める。
「・・・、置いていかないで」
セレンは一言つぶやくと、そのまま泣き出していた。
「いたいです、テルル」
「バカ、バカ!」
テルルはますます力を込めて、俺の体を叩いている。
体力が減っているかもしれない。
この怪我は、戦闘による公傷として認められるのか?
「ごめん」
「ゆるさないから、ゆるさないから・・・」
テルルは叩くことをやめたが、今度はすすり泣いていた。
後で、近くにいたジンクに話しかける。
「どうして、助けてくれなかった?」
「私に、どうやって助けろと?」
ジンクはにこやかに質問する。
「見てのとおり、俺は無傷だっただろう」
俺は身につけていた、みかわしの服を指し示す。
服には、少しも傷がついていない。
「私の説明で、止められると思いますか?」
ジンクは真
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