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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十八 〜幽州での戦い〜
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とし、火をかけたのだ。
 当然、賊は慌てふためき、ますます混乱に拍車がかかった。
 そこに、星が横撃をかける。
 もはや、収拾をつけるのは不可能であろう。

「大将!」

 周倉が、手勢を率いて戻ってきた。

「ご苦労だった」
「大将。アンタの指示通り、何儀を煽ったぜ? しかし、こんなに上手く行くとはなぁ」

 周倉から聞いた情報では、一応、首領が何儀、副首領が劉辟、って事になってたようだ。
 だが、二人の関係は上手く行っているどころか、寧ろ険悪ですらあったらしい。
 程遠志を討った後、将のいない黄巾党は、繰り上がりで首領になるものが続出している。
 だが、その序列は決して納得づくのものではないらしく、こういった例は枚挙に暇がない……そう、周倉から教えられた。

「賊は全軍で四万近くだが、仲違いを上手く利用すれば、各個撃破が可能になる、か。……しかし、恐ろしい事を考えるなぁ、土方は」
「数で劣る我らなのだ、そこは知恵で補うしかないからな」

 む、何かこちらに向かってくる。

「ありゃ、何儀だぜ?」
「そうか。周倉、やるぞ?」
「お、応っ!」

 その行く手に立ちはだかる。

「どけどけっ! こうなりゃ、公孫賛の首狙いだ!」
「そうはさせん」
「て、てめぇは周倉! 裏切りやがったか!」
「俺はもう、黄巾党には付き合いきれない。だから、死ね」
「い、言わせておけばっ!」

 繰り出された槍を、長刀で弾き返す周倉。

「うっ! し、しまった!」

 汗で滑ったのか、何儀は槍を取り落とした。

「公孫賛。今だ」
「え?」
「討ち取る絶好の機会だぞ。急げ!」
「お、おう! 死ねっ!」

 呆然とする何儀を、真っ向から斬りつけた。

「……ぐっ」

 一刀で、賊将は息絶えた。

「お見事」
「……い、いや。でも何故、私に討たせた?」
「黄巾党の大将首、見事な手柄ではないか。そうではないか、皆の者」

 私の言葉に、皆が頷いた。

「全く、手柄まで譲られるとは思わなかったぞ」
「はて、譲った覚えなどございませぬぞ。太守様」
「え? け、けどさ……」
「ここにいるのは、北平太守、公孫賛殿の麾下のみ。当然、手柄は太守に帰しますな」
「……わかったよ。ありがとうな、土方」

 ふっ、どこまでもお人好しな事だ。

「軍勢が近づいてきます! 旗は『趙』、それに『関』!」

 どうやら、これで一段落、となりそうだ。
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