第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十八 〜幽州での戦い〜
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けて、捕まえようとしたら、逃げられたのだ。追いかけている最中、落とし穴があって、落っこちて……後は、覚えていないのだ……」
敵の単純な策に嵌まった、という訳か。
やはり、斥候の任は重過ぎたか……身軽と言うだけで任せた、私が迂闊であった。
「そうだ! 逃げた賊を捕まえるのだ!」
慌てて身体を起こそうとする鈴々を、押さえた。
「それならば心配は無用だ。徐晃が捕らえたようだ」
「徐晃が?」
「そうだ」
「……ごめんなさいなのだ」
「何故謝る?」
「だって、任せろなんて言ったのに、失敗したのだ……」
落ち込む鈴々の頭を、軽く撫でてやる。
「気に病むな。もともと、鈴々の役割は私達の護衛。違う役割を与えた、私の判断違いだ。むしろ、詫びるのは私の方だ」
「お兄ちゃん。怒らないのか?」
「鈴々を叱らねばならない理由などない。良くやったぞ、鈴々」
「にゃは♪ お兄ちゃんは優しいのだ」
「あ〜、和んでいるところ済まんが。怪我の手当て、した方がいいぞ? かすり傷みたいだけど」
そう言いながら、公孫賛は何かの塗り薬を取り出した。
「それは?」
「自家製の怪我薬さ。いろんな事をやらなきゃいけないから、そのうちに覚えちまったのさ」
器用貧乏。
……ふと、そんな事が頭に浮かんだ。
だが、逆に考えれば、それだけ何でもこなせる、というのは有能な証拠でもある。
「お姉ちゃん、ありがとうなのだ。お姉ちゃんも、優しいのだ」
「そ、そんな事はないぞ? エヘヘ……」
照れるのは良いが、ちと度が過ぎる気がする。
余程、他人から誉められる事に慣れていないようだな……。
戻ってきた徐晃は、二人の賊を引っ立てていた。
「この二人のみだ。逃がした奴はいない筈だ」
「忝い、徐晃殿」
縛られた賊の片割れは、不安げに私を見る。
だがもう一人、髭面の男は、落ち着き払っていて、常人には見えぬ。
「些か、訊ねたい事がある。素直に答えれば、命は助けてやろう」
私は、髭面の方に話しかけた。
「……その前に、一つ聞かせろ」
賊の一人が、私に向かって言った。
「何だ?」
「アンタ、名は? 俺は、周倉って言う」
……一々、驚く事でもないか。
恐らくは、あの周倉であろう。
「それを聞いて何とする?」
「そんな格好をしているが、アンタ、ただの兵じゃないだろう? 目付きといい、立ち居振舞いといい。申し訳ないが、そこの将らしき御仁より、アンタが気になってな」
「……どうせ、私は地味で普通だよ……」
拗ねてしまったようだ。
公孫賛は、後で話しておけば良かろう。
もし、目の前の人物が、あのに周倉ならば……やはり、仲間に引き
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