第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十八 〜幽州での戦い〜
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「わ、わかった。やってみる」
とは言うもの、一朝一夕で改善する類のものではなさそうだ。
……ん?
ふと、妙な気配を感じ、私は立ち止まる。
「どうかしたか?」
「……どうやら、お出ましのようだ」
「お兄ちゃんも気がついたのか?」
鈴々が、声を潜める。
「うむ。どうやら、斥候のようだが。鈴々、捕らえられるか?」
「やってみるのだ」
「よし。ただし、その蛇矛は置いていけ、目につき過ぎる」
「でも、得物なしじゃ、いくら雑魚でも捕らえるのは大変なのだ」
「では、これを使え」
堀川国広を鞘ごと外し、手渡した。
「けど、お兄ちゃんみたいに腰に差すと、動きにくそうなのだ」
「ならば、こうすれば良い」
襷掛け用の紐を鞘の先に通し、背負えるように結ぶ。
鈴々の身の丈だと、国広の長さが丁度良い。
「どうだ?」
「これなら、動きやすいのだ」
「よし。その剣は見ての通り、細身だ。力任せに叩きつけても相手は斬れぬ。それに、折れてしまうだろうな」
「うー、扱いが難しそうなのだ」
「今は時が惜しい。それ故、峰打ちのみ、伝授しよう」
「にゃ? 峰打ち?」
「そうだ。こうして、刃を返して相手を打ち据える。無論、相手を倒さなければならぬ時ではなく、此度のように捕らえる場合などに用いる」
兼定にて、手本を示す。
何度か素振りをしてから、
「何となくわかったのだ。じゃ、行ってくるのだ!」
素早く、身を翻した。
……ふむ、何気なくあのような格好をさせたが、まるで忍びの者だな。
尤も、鈴々にはあまり似合わぬか……。
「なあ、ちょっと遅くないか?」
「……ああ」
公孫賛の言う通り、なかなか鈴々は戻ってこない。
鈴々の事だ、よもや不覚を取るとは思えぬが。
「様子を見に行かせた方が、良くないか?」
心配顔の公孫賛。
……どうするか。
鈴々を信じるなら、もう少し待つべきだろう。
だが、万が一、と言う事もある。
それに今、不意を突かれる事があれば、少々危険な事になるやも知れぬ。
「よし。誰か、様子を」
「その必要はないぞ、土方殿」
聞き覚えのある声に振り向くと、鈴々を小脇に抱えた人物が、立っていた。
「徐晃殿か……」
「久しいな、土方殿」
「何故、此処に?」
「話は後だ。手を貸してくれ、賊の間諜を捕らえてある、連れてきたい。それから、この娘は、気を失っているだけ。直に目を醒ますさ」
「わかった」
先ほど、斥候を命じようとした兵に、徐晃の手伝いを指示。
「鈴々。しっかり致せ」
「……う……。あ、あれ? お兄ちゃん?」
目を瞬かせる鈴々。
「何があった?」
「……賊を見つ
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