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ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第3章 交渉魔術王アーベル
第20話 そして、新たな仲間(?)との旅立ちへ・・・
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だな。俺が教えてやるよ」
男はかなり酔っぱらっていた。
俺は男の話す内容は予想していたが、念のため聞いてみた。



王宮の採用試験での話だ。
ロマリアの王子の話し相手を募集していたのだが、転職したばかりのジンクも参加していた。
面接官はジンクに話しかける。
「特技はイオナズンとありますが?」
「はい、イオナズンです」
「イオナズンとは何のことですか」
面接官はイオナズンを知っている。しかし、ジンクが提出した略歴「最初はあそびにん」「あそびにんから賢者になりました」を見る限り、目の前の人物が使用できる呪文ではない。

「はい、呪文です。敵全体に大ダメージを与えます」
ジンクは、面接官が呪文の効果を知らないと判断して呪文の効果を説明する。
「・・・。で、イオナズンは王宮で勤めるにあたって、どのようなメリットがありますか」
「はい、敵が襲ってきても守れます」
ジンクは自信満々に答える。
普通の相手であれば一撃だろう。

面接官はあわてて質問を続ける。
「王宮内に敵はいません。それに王宮内での攻撃呪文の使用は禁止されています」
「でも、衛兵にも勝てますよ」
ジンクはさらりと危険なことを口にする。
「いや、勝てるとかそういう問題ではなくてですね」
面接官は論点がずれていると思いながら話を続ける。
「敵全体に100以上与えるのですよ、ちなみに、・・・」
「聞いていません。帰ってください」
面接官はジンクへの説得をあきらめ、帰るように促す。

「あれあれ。実演しなくていいのですか?なんならここで使ってもいいですよ、イオナズンを?」
ジンクは胸をはって、自信満々に詠唱準備を始めようとする。
「いいですよ。使ってください、イオナズンとやらを。つかったら帰ってください」
面接官は疲れた様子で、ジンクにおざなりの対応をする。

ジンクはイオナズンを唱えた。
何も起こらなかった。
「MPが不足していたようだ。運がよかったな」
ジンクは肩をすくめて、両手を前に出した。
「帰れ」
面接官はため息をついた。
「MPが回復したら、また来るよ」


結果として、ジンクは採用された。
面接官が、採用結果の報告を王子にしたときに、ジンクの話を忌々しげにする様子をみて、王子は一言「決めた」と言ったのだ。
「父上にかけあってくる」
「お待ち下さい、王子様」
面接官の呼びかけを無視して、王子は父親であるロマリア王に直訴し、ジンクの採用が決まったのだ。
面接官はこの日の事を「悪夢のはじまり」といって一生悔やんだという。


「な、おもしろい話だろ」
「・・・、実際に本人の目の前でこの話を聞くとは思わなかった」
俺は前の世界で、似たようなネタ話を聞いたことがあったが、この世界で実際に行う奴がいた
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