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ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第19話 そして、精算へ・・・
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いだけだ」
キセノンは簡潔に答える。

俺は、キセノンの言葉に違和感を覚えた。
キセノンはあからさまな冗談を除いて嘘は言わない。
「嘘をついた商売人は信用を落とす」は、この世界でも絶対のルールだ。
特に、国家に影響力を持つ商人となれば、信用を落とすことは致命傷になる。

だが、「真実を話さない」ことや、「自分の言葉を、相手が勝手な思いこみで誤って解釈する」ことは、「嘘をつく」ことにはならない。
キセノンの「身内に甘い」という言葉も嘘ではないが、すべてを語っている訳ではない。

俺に与えられた情報は少ないが、自分なりに推測してキセノンに質問する。
「この契約は口外しないと約束しているが、この契約について質問した人はいますか」
「直接はないな。テルルなら気がついているかもしれないが」
キセノンは言葉を選ぶように慎重に答える。

俺はさらに質問する。
「そうですか。俺の母ソフィアとあなたとで、俺たちのような契約をしていましたか?」
キセノンは苦笑した。
そして、キセノンからの答えはなかった。

恐らく、事実だろう。
俺とキセノンとの契約と同様に、この契約の事を口外しない約束があるのだろう。
だから、沈黙を続けたのだ。
それでも、キセノンは話はじめた。
「ソフィアは、お前が冒険にでてからすぐに、俺のところに来て、みかわしの服の事を聞いた」

ソフィアは俺の服をみて、みかわしの服と確信したのだろう。
だから、キセノン商会に行って確認したのだろう。
キセノンも「冒険者が何を買ったかは商売上の秘密でいえないのはご存じでしょう」などと言って答えて、契約の事を口外しないよう努力はしたはずだ。
それでも、ソフィアは俺がみかわしの服を入手した経過を理解したはずだ。
そのうえで、ソフィアが俺とキセノンとの契約と同様の契約をキセノンと結ぶよう提案したのだ。
ソフィアがキセノンに対して、俺が借りたお金と同じ金額のお金を貸すことで、実質俺を支援していたのだと。

金額などは、俺たちのパーティ装備と所持金を俺に質問することで把握していたはずだ。
俺は自分の失敗を確信した。
ソフィアに隠し事はできないことを。

キセノンは追い打ちをかける。
「俺もソフィアも、親ばかなのだよ」
キセノンは、ソフィアにこの契約が知られることを確信していたようだ。
それでも、俺には一言も言わずに契約を結んだのだ。
「かないませんね、おふたりには」
俺はため息をつく。

「がっかりするな、アーベル。これは経験の違いだ」
「それなら、一生追いつけないですね」
「そんなことはない。俺がお前ぐらいのときは、お前ほどしっかりはしていなかった」
「ようするに努力ですね。精進します」
「がんばれよ、アーベル」
キセノンは俺の肩を
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