第二幕その十三
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第二幕その十三
「私の目に映る全てのものはこのノルン達から夜毎に告げられるものです」
「それを知るのは二人だけなのですよ」
「そうです」
エルダはローゲの言葉にも応えた。
「二人だけなのです。それは」
「ではもう一人は誰だ?」
ヴォータンは怪訝な顔でローゲに尋ねた。
「それは」
「そのもう一人はエルダよりはずっと見えないようですが」
何故かこう述べるローゲだった。
「しかし知恵はそこから出て来るかも知れませんね」
「知恵が、か」
「まあそれはどうでもいいことです」
やはりそれについては言おうとはしないローゲだった。
「エルダのお話ではありませんから」
「そうだな」
ヴォータンもローゲが何かを知っていることは察していたがそれと共に何も言わないこともわかっていたのであえて問わないのだった。
「それでエルダよ」
「はい」
「ここに来た理由はだ」
「その娘達が私に告げたことを貴方に知らせる為に」
その為だというのだ。
「貴方の危機を救う為に」
「私の危機をか」
「そうです」
また言うエルダだった。
「若しその指輪を持ったままだと」
「どうなるのだ?」
「呪いにより」
そのニーベルングの呪いであった。
「貴方は幽暗の中に陥り滅んでしまうでしょう」
「滅ぶのか、私が」
「はい。ですから」
指輪を離せというのだった。
「何があろうとも。それでは」
ここまで離して姿を消すエルダだった。エルダが姿を消し誰もが怪訝な顔になっていた。ただ一人赤い服の男だけが納得した顔で頷いていた。
「エルダ、やはりわかっているか」
「それではやはり」
「その指輪は」
そんな彼に気付かず神々は怪訝な顔になっていた。
「手放すべきか」
「あのエルダの言葉に従って」
「我等の為にもですね」
ドンナーとフローだけではなくフリッカも言うのだった。
「そうだ。神々の為にもだ」
「指輪を手放し」
「元々惜しくはありませんし」
「よし」
ドンナーが他の二人の言葉を纏めた。そうして巨人達に顔を向けて告げた。
「巨人達よ」
「何だ?」
「決めたのか?」
「あの黄金は御前達のものだ」
こう彼等に言うのである。
「それでいいな」
「そうして、御願いだから」
当のフライアもそれを願ってきた。
「私はそれで」
「わかった」
ここで遂に頷くヴォータンだった。
「この指輪を手放そう」
「そうして下さい」
フリッカもここぞとばかりに夫に告げた。
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