第13話 そして、民間療法(嘘)へ・・・
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子でセレンは理解してくれた。
「それじゃあ、これを」
セレンは「まんげつそう」と呼ばれる草を手にして、俺に飲ませようとする。
「セレン。ちょっとまって」
テルルは、セレンを押しとどめる。
「その前に、試したいことがあったのよ」
テルルは、休んでいる俺の目の前に立つ。
「本当に動かないのかしら?」
テルルは俺を馬乗りにして、にこやかに話しかける。
やばい、身の危険を感じる。
しかし、体は全く動かない。
セレンは心配そうに俺を見つめるが、助ける様子は見せない。
「確かめてあげる」
テルルは、両手を俺の脇腹に当てて、くすぐりを開始する。
「!」
俺は強いこそばゆさを感じて体を動かそうとするが、動かない。
かといって、抗議の声を上げることすらできない。
出来ることと言えば、抗議と怒りの思いを、気配で示すことだけだ。
「テルル、やめて!」
セレンは、俺の発する気が、殺意に変化する前にテルルに指摘する。
「ごめんね、アーベル」
そういってテルルは起きあがると、俺に謝る。
「大丈夫、アーベル?」
セレンは俺に、まんげつそうを食べさせながら心配そうに声をかける。
「・・・ああ、たすかったよ、セレン」
俺は礼を言うと、テルルをにらみつける。
今の俺なら、呪文を使わなくても、視線だけでテルルを氷づけに出来そうだ。
「ごめんね、アーベル。確かめたかったの。民間療法として、くすぐると回復すると書かれていたから」
「伝承は、嘘だったわけだが」
「だから、ごめんって」
テルルはあやまったが、あまり反省の色はないようだ。
民間伝承という話も本当かどうか怪しいが、確かめるすべもない。
「・・・まあ、それならば仕方ないですね」
俺は、努めて冷静に答える。
テルルとセレンは、ほっとする。
カザーブへの旅を再開する。
「・・・」
「実は、俺も民間療法を知っているんだ」
俺は、麻痺しているテルルの前で嬉しそうに話しかける。
テルルの表情に変化がないが、おそらく麻痺だけでなく恐怖と後悔が全身を駆けめぐっているだろう。
さすがに、事前告知なしの民間療法による治療法を行うほど、俺は鬼畜ではないので、まんげつそうでテルルを回復した。
また、カザーブの村が見えるところでテルルのまねをすれば、犯罪者として衛兵に捕まることも、理解していた。
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