第二幕その十二
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第二幕その十二
「フライアを助けるべきだ」
「その通りだ」
「いや、ならん」
しかしローゲは彼等の言葉も聞こうとはしなかった。
「これは私のものだ。絶対にな」
「ではそれではフライアは」
フリッカはあくまで妹のことを考えていた。
「このまま」
「だが指輪はだ」
ヴォータンはそれにあくまでこだわっていた。
「渡さぬ、この力もな」
「待つのです」
「!?」
「この声は」
突如としてここで女の声が聞こえてきた。誰もがその声がした方に顔を向けた。
するとそこに理知的な美貌を見せる緑の目の女がいた。髪も緑であり長いドレスを着ている。そのドレスも緑であり全てを緑に包まれた女であった。
「貴女か」
「久し振りですね、ローゲ」
「ええ、確かに」
ローゲは彼女と話をするのだった。
「お元気そうで何よりです」
「はい。ヴォータンよ」
女はローゲとのやり取りからヴォータンに顔を向けるのだった。
「避けるのです」
「避ける!?」
「そうです。指輪の呪いから避けるのです」
彼女はこう彼に告げるのだった。
「その指輪を手に入れる時は貴方の身には救いもなく」
「救いもか」
「そう。そして」
女の言葉は続く。
「暗き破滅に身を滅ぼすでしょう」
「警告する女よ」
ヴォータンはその彼女に顔を向けて問うた。
「御前は何者だ」
「私は過去を知り未来をわかっている者」
「ノルン達か!?」
「いや、違うようだ」
フローがいぶかしむドンナーに答えた。
「彼女達は常に三人でいるからな」
「そうか。では違うな」
「うむ、間違いない」
「私の名はエルダ」
女はここで名乗った。
「とこしえの世の太初の波です」
「とこしえの!?」
「波だというのか」
「智恵を司る女神」
また名乗るのだった。
「この世のはじめに創造された三人の娘達は」
「ノルン達のことだな」
「そうだな」
ドンナーもフローもここでわかったのだった。
「間違いない」
「あの娘達のことだ」
「それは我が娘達」
「何とっ」
フリッカもそれを聞いて驚きの声をあげた。
「あの娘達は貴女の」
「そうです。かつての我が夫との間に生まれた娘達」
彼女はまた言った。
「この世の最初に私と共に生まれたその夫と」
「それは一体」
「誰なのだ?」
巨人達もいぶかしむ。当然神々もだ。しかしローゲはその中で一人涼しい顔をしていた。そして何処か親しげな顔でエルダを見ているのであった。
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