第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十七 〜白馬将軍〜
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いのだが。一緒に行かぬか?」
「ええんか? ウチは、そんなに親しいっちゅう訳やないで?」
「だが、全く面識がない訳でもあるまい? ならば、構わぬだろう」
「せやったら、同席させて貰うわ」
城門には張世平ともう一人、見慣れぬ男がいた。
「おお、これは土方様の方からお運びとは恐縮です。張遼将軍も、ご無沙汰しております」
商人らしく、如才のない挨拶。
だが、強かさを秘めた者が、ただ久闊を詫びに来ただけ……とは思えぬな。
「久しいな。だが、私がここにいる事、よくわかったな?」
「ははは、土方様。貴方様はすっかり有名人ですよ? 黄巾党はその名を聞いただけで震え上がるとか」
「所詮は噂に過ぎぬ。それで、今日は何用か?」
「はい。その前に、この者をご紹介させていただけますかな?」
もう一人の男が、前に進み出た。
「お初にお目にかかります。手前、蘇双と申します。張世平とは商いの仲間でございます」
「土方だ。馬商人、という事で良いのか?」
「はい。ただ、もう一つ、酒を商っております」
途端に、霞が反応した。
「酒商人かいな。美味い酒あったら、ウチんところへ持ってきてくれへんか?」
「はい、張遼将軍のような御方でしたら、喜んで。是非、ご贔屓に」
流石は、張世平の仲間、しっかり者のようだ。
「それで、張世平。今日は、蘇双を紹介に来ただけ……ではあるまい?」
「土方様には敵いませぬな。実は、蘇双を連れてきたのは他でもありません。これなのですが」
張世平は、懐から包みを取り出す。
言うまでもなく、それは石田散薬。
「如何した? もしや、商いにならぬか?」
「いえいえ、逆でございますよ。効き目があると評判は上々。その上、土方様のお名前が広まるにつれ、評判が評判を呼んでおります」
我が家秘伝の散薬だ。
売れているのであれば、言う事はないな。
「ただ、惜しまれるのが用法でございましてな」
「用法?」
「はい。服用の際に水、湯、茶……いろいろと試しましたが、どうも酒との相性が良いようです。ただ、何か足りない気がしましてな。そこで、この蘇双に相談した訳です」
蘇双は頷いてから、
「手前も、商売柄様々な酒を扱っております。張世平に頼まれ、各地から酒を取り寄せたのですが、どれもしっくり来ません。そこで、土方様に伺いたく、お目見えを願った訳でございます」
なるほどな。
確かに、石田散薬は日本酒の燗酒で服用するもの。
だが、この時代、日本酒が存在する筈もない。
「確かに、これを用いるのに適しているのは、私が知る清酒だ。だが、大陸中を探しても、その酒は手に入るまい」
「では、蓬莱の国にはある、と?」
「その保証はない。どうしても言
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