第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十七 〜白馬将軍〜
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北平に至る道中。
……それは、凄惨の一言に尽きた。
元々、さほど豊かではない土地とは言え、通る村の悉くで餓死者がいるという有様だ。
「せめて、食糧を分けてあげられれば良いのですが……」
「愛紗ちゃん。それが無理な事はわかってますよねー?」
「そうです。それに、焼け石に水です……。却って、食糧を貰える、という風評が流れでもしたら、それこそ一大事です」
「我らとて、行軍に必要な分しかない。民を救うために、自分たちが飢えては何もならぬ……か」
「ホンマ、世知辛いなぁ。けど、ウチらには役目がある……それが済むまでは、耐えるしかないな」
「うにゃー、もどかしいのだー! 黄巾党、まとめて出てくるのだー!」
私とて、何とかしてやりたくとも、何も出来ない己の無力さが募るばかり。
……神でも仏でもない私だ、思い上がりなのかも知れぬが。
「なあ、歳っち」
霞の言葉で、思考を中断する。
「どうかしたか?」
「先に、ウチが北平に行った方がええんちゃうか?」
「公孫賛に、話を通しておく……という事か?」
「やっぱ、歳っちは話が早いなぁ。歳っちの軍は、義勇軍ちゅうても規模が半端やない。黄巾党と間違われたらかなわんやろ?」
「ふむ、確かに。だが、それならば私も参るべきだな」
「う〜ん、どうやろ? 公孫賛はんは、確かに噂やとええ人や、ちゅうけどなぁ」
霞も、伝聞だけで判断はつきかねているようだ。
だが、どのみち会うのならば、早い方がいいに決まっている。
「やはり、出向くとしよう」
「では、私達もお供を」
「いや、愛紗達はこのまま、軍の指揮を頼む。黄巾党の襲撃がないとも限らんからな」
……む、皆不満そうに見えるのだが。
「主。霞と二人っきり……何事もありませぬな?」
「そうですよ、お兄さん。風には隠し事は無駄ですからね」
「歳三様。信じていますから」
「……ただ、ご主人様はお優しいですから。それが、気がかりではあります」
「にゃ? お兄ちゃん、みんなどうしたのだ?」
一人、空気を読まない鈴々が、この時ばかりは救いだ。
「心配せんかてええって。ウチも、抜け駆けはしとうない。……ま、歳っちはええ男やけどな」
「ふふ、戯れはこのくらいにしておけ。とにかく、後を頼んだぞ?」
「御意!」
皆の返事を待ってから、馬の手綱を握りしめた。
北平の城。
取り立てて特徴もなく、晋陽と似ている印象。
藤堂高虎公や、加藤清正公のような、個性のある築城の名手が不在なのだろう。
もっとも、設計思想が根本的に違うから、特徴を持たせる必要がない、という事か。
……と、城に出した使者が、こちらに戻ってきたようだ。
「張遼将軍、土方様! 公孫賛様が城内へ
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