第二十九話
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た石畳の見事さは兵員を速やかに動員する為だけには限らず、物資の流通や一般の人々の往来とてその恩恵に預かり、車輪の幅の規格まで統一されていて、このような施設や仕組みを造り上げるだけでは無く、十全に維持・管理をし続けているというだけでもグランベルがいかに大国であるかをまざまざと見せつけられる。
いち公国のシアルフィでこの様子なのだから王都のバーハラはこれ以上の優れた都市であるとの想像をしておいたほうがいいだろう。
そうしてシアルフィで15の誕生日を迎えた俺は、その後しばらくしてグランベル士官学校に入校した。
その際にバーハラへはシグルド公子が連れていってくれた。
てっきり一人で向かうものと思っていたのでこれほど心強いことは無かった。
彼は人の話は基本的に聞かずマイペースなのだが、行動の基盤は善意で出来ている。
その現れだったのであろう。
別れ際に交わした握手、彼の手は大きく、人柄を感じさせる温かさに満ちていた。
入校の手続きを済ませた俺は案内資料をもらい、そこに提示されていた宿舎へ向かい荷物を運び入れた。
荷物のうち槍や剣など武器類は保管庫に預けることに、金銭などの貴重品は事務室の金庫に預けることになっていた。
部屋の中は細長い1ルームで、2段になった寝台と机と椅子と箪笥が2組だけという簡素なものだ。
浴場や食堂に洗面所やトイレなどは宿舎で共用になっていた。
相部屋なのは間違いないがルーメムイトはまだ着いていないようだ、ここは先に自分のエリアを確保しておくか、それとも相手が着いてから交渉するか思案のしどころかと思っていたらその相手が入ってきた。
その燃え上がるような鮮やかな赤毛と、整った、そして女の子のような顔立ち、言われなくても察しが着くだろう。
アゼル公子だ。
緊張した様子だったので、俺はいつものお辞儀と共に先に声をかけた。
「初めまして、わたしはレンスターの第二王子ミュアハと申します。どうやら相部屋の方のようですね。ヴェルトマーの縁者の方とお見受け致しました。以後よろしくお願いします」
「ぼ、ボクはヴェルトマーのアゼルと言います。こちらこそよろしくです」
俺が握手を求めようと手を差し出すと、アゼル公子はそれにおずおず応じ、握ってくれた。
「さて、では寝台はどちらが上でどちらが下を使うか、机や箪笥のほうも分担をどうするか決めてみませんか?」
「は…はい。ボクはミュアハ王子の選んだあとの残りでいいです」
「ふぅむ。でしたらわたしのほうが体が大きいので寝台は下でよろしいでしょうか?この寝台は年代もののように見受けられるので底が抜けてしまわないように」
「ふふふ。それでお願いしますね」
なんて話をしていると来客があった。
オールバックに髪をなでつけて、そのうちひと
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