暁 〜小説投稿サイト〜
〜烈戦記〜
第一話 〜門出〜
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力に任せた事はせず、性格は冷静で寡黙。礼節を重んじていて読書を好むという変わり者…だと思う。
実際僕は父さんの関に所属する武官の人達を見てみても誰も彼の様な気質を持つ者を見た事が無い。
そんな彼の事を父さんも信頼して自分の家族を任せている。
そんな二人を見ていると、これが理想の主従関係なのかと思わされる。

『では参りましょうか』
『うん』

凱雲は連れてきていた二頭の内、一頭の馬の手綱を渡してくる。
それを受け取り馬の横に立つ。

『…』
『…豪帯様』

本当にこの瞬間だけは毎回心が折れそうになる。
僕は一息置いて凱雲に声をかける。

『凱雲』
『はい』

凱雲は何も言わずに僕の体を持ち上げると馬に乗せてくれた。
…そうなのだ。
恥ずかしい事に僕は馬に一人で乗れないのだ。
しかも、馬術云々では無い。
"背"が足りないのだ。
もう18歳にもなるのに僕の背は未だに160辺りなのだ。
最初の頃は周りの人も馬に乗るのには人の手を借りなければいけない僕にあれこれ励ましの言葉をくれたものだ
それすら僕の心を削りとる凶器になるとも知らずに。
凱雲は道中の護衛役という事で今では手慣れたように接してくれるが、最初の頃は彼の性格上とても気をつかってくれるので死ぬ程恥ずかしかった。
現在はこの短いやり取りが僕らの間で成立している。

『…僕、きっと大きくなるからね』

物理的に。


『はい』



まず始めに向かったのはこの県を担当する県長の所だ。
この人は7年前に父さんがこの群の太守から関の守将に任命されたさいに父さんと変わって県長になった人で、僕がこの村で叔父さんと二人で住んでる時や、叔父さんが亡くなってからなどお世話になった人だ。
勿論父さんが自分の目上の人間だからということもあるだろうけど、時折家に顔を出しては物を家に持ち込みたがらない叔父さんに変わって自分の読み終えた書物なんかを譲ってくれたりした。
叔父さんはただでさえ狭い家の中がさらに狭くなると渋っていたが、叔父さんの手伝いである農作業と木刀の素振り以外やる事が無い僕にとってはとても興味を惹かれるもので、これには叔父さんも渋々了承してくれていた。
そして今回この村から関の方に戸籍が移るという事で最後の挨拶に向かうのである。

『あ、豪帯だ!!』

村の中を歩いていると急に名前を呼ばれて振り返る。
すると普段遊んであげている村の子供達がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

『見送りですかな?』
『かな』
『随分と慕われてるようで』
『へへっ』

見送りに来てくれたのかな?
そう思うと少し照れくさくなった。

『豪帯!!』
『豪帯ちゃん!!』
『なんだなんだお前達!!わざわざ僕の見送りに来てく
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